「障害者雇用枠でIT職に就きたい」「未経験可の求人に応募しても、書類選考で落ちる」。ひと口にIT職と言っても、中身はプログラムを書く仕事から、パソコンを箱から出して設定する仕事まで幅があります。
結論から言うと、未経験から障害者雇用枠でIT職に就くことはできます。ただし、狙う職種を間違えると、スキルが積み上がらない仕事を何年も続けることになります。
この記事では、障害者雇用枠のIT職が実際は3つに分かれること、選考で何を見られるか、どこで学ぶか、そして面接で障害をどう伝えて配慮を頼むかまでを順番に書きます。
- 障害者雇用枠のIT職は3つに分かれ、未経験で入れる枠が違う
- 選考で見られるのは資格より、自分で作ったものと、その説明
- AIがコードを書くいま、未経験のIT職に求められることが変わった
- IT職のスキルを身につける4つのルートと、障害への配慮の有無
- 手帳・開示・頼める配慮を、面接でどう伝えるか
結論|障害者雇用のIT職は3つに分かれる。どこを狙うかで準備が変わる
求人票の「IT職」は、実際には次の3つに分かれます。未経験で入れる枠の広さと、必要な準備がまるで違います。
| IT職の種類 | 職種の例 | 未経験の枠 | 準備に要るもの |
|---|---|---|---|
| IT事務・サポート | データ入力、キッティング、ヘルプデスク、テスター | 多い | パソコンの基本操作 |
| 開発・制作 | プログラマー、システムエンジニア、Webデザイナー | 少ない | 自分で作ったものと、その説明 |
| データ・AI | データアナリスト、AI関連の補助 | とても少ない | 数字を扱う訓練と、分析の実績 |
IT事務・サポートを狙うなら、パソコンの基本操作ができれば応募できます。開発・制作を狙うなら、未経験可と書いてあっても、自分で作ったものを見せられるかで結果が変わります。
どちらを選ぶ場合も、先に決めておくことが2つあります。1つは障害者手帳を持っているかです。障害者雇用枠の求人に応募するには原則として手帳が要り、申請から交付までは、東京都・横浜市の案内ではおおむね2か月かかります。まだなら、学習と並行して申請を進めてください。
もう1つは障害を開示するかどうかです。開示して働くか(オープン就労)、伏せて一般雇用枠で働くか(クローズ就労)で、応募先も、頼める合理的配慮の範囲も変わります。IT職は成果物で評価されるぶん、開示しても任される仕事の幅が狭まりにくい職種です。

障害者雇用のIT職3種類|求人の中身と、未経験で入れる枠
IT事務・サポート|入りやすいが、続けても仕事の中身が変わりにくい
データ入力、キッティング(パソコンの初期設定)、ヘルプデスク、テスターなどです。手順が決まっていて、パソコンの基本操作ができれば採用されやすい枠です。手順が決まっている仕事はASDの特性と相性がよく、割り込みも少なめなので、体調を整えながら働き始めるには向いています。
注意点は、続けても仕事の中身が変わりにくく、給与も上がりにくいことです。ここから開発・制作へ移るなら、働きながら別に学ぶ時間が要ります。
開発・制作|枠は少ないが、障害者雇用枠でも給与が落ちにくい
プログラマー、システムエンジニア、Webデザイナー、コーダーなどです。未経験可の求人はありますが、基礎を自分で学んでいることが前提になっていることが多いと考えてください。
求人でよく名前が挙がるのは Java・PHP・Python・JavaScript(とTypeScript)で、あわせて Git(変更履歴の管理)と SQL(データの取り出し)が使えるかを見られます。そのぶん、スキルで評価されるため障害者雇用枠でも給与が落ちにくく、在宅勤務の求人も多い職種です。通勤や職場の音が体調に響く方には、この点が大きく効きます。
データ・AI|未経験の枠はとても少ない
データアナリストやAI関連の補助です。数字を扱う訓練が要り、未経験からいきなり入れる枠はとても少ないのが実際です。目指すなら、まずIT事務や開発で実務経験を作ってから移るほうが現実的です。

IT職の選考で見られるのは、資格より「自分で作ったもの」
開発・制作を狙う場合、実務経験がない人が選考に残る方法は作ったものを見せることです。Webサイトでも、小さなアプリでも、業務を自動化する仕組みでも構いません。
ITパスポートなどの知識の資格が無駄になるわけではありません。ただし資格は「知っている」の証明で、成果物は「作れる」の証明です。未経験の応募で足りないのは後者のほうです。
そして作ったものより、その説明のほうが差になります。何を作ったか、なぜその作りにしたか、どこでつまずいて、どう直したか。ここを言葉にできると、「教えてもらえればできます」ではなく「自分で調べて進められます」が伝わります。
ここは発達障害のある人がつまずきやすいところでもあります。話が細部から始まってしまう、順番が飛ぶ、聞かれていないことまで話してしまう——面接で起きやすい形です。あらかじめ紙に4つだけ書いて、その順で話すと決めておくと崩れません。就労移行支援を使う場合は、この説明の練習まで一緒にやってもらえます。
面接で説明できるようにしておく4つ
- 何を作ったか(画面を見せながら1分で言える形にしておく)
- なぜその作りにしたか
- どこでつまずき、どう調べて直したか
- 作るのにどれくらいの期間をかけたか
AIがコードを書くいま、未経験のIT職に求められることが変わった
学び始める前に、この話を先に読んでください。コードは、AIに日本語で指示すれば下書きが出てくるようになりました。AI研究者のアンドレイ・カルパシーが2025年2月に「バイブコーディング」と呼んだ進め方で、Collins English Dictionary は同じ年の言葉に選んでいます。
総務省「令和7年版 情報通信白書」によると、生成AIを業務で使っている日本企業のうち、「プログラミングコードの生成やバグ修正」に使っているのは38.9%です。米国は86.0%で、日本もこれから増えます。
未経験からIT職を目指す人にとって、これは追い風と逆風が同時に来ている状態です。
生成AIが未経験者に効くところ
- 文法や環境構築で止まっていた人が、日本語で指示して形にできる
- AIには何度でも同じことを聞ける。人に聞くのが苦手でも進む
- 作れるものの幅が広がり、成果物を用意しやすくなった
生成AIで求められる水準が上がるところ
- 「コードが書ける」だけでは差になりにくくなった
- AIへの指示は「あいまいなところを自分で埋める」作業。指示があいまいだと困る人には新しい負担
- 手順が決まった仕事(テスター・データ入力)ほど自動化されやすい
3つ目の逆風は、この記事のタイトルにある「軽作業で終わらせない」に直結します。IT事務・サポートから入る場合も、そこで止まらない前提で学ぶ時間を確保してください。
いま選考で見られるのは、書けるかどうかよりAIが出したコードを読んで、違いに気づいて直せるかです。細かいズレが気になるASDの特性は、ここで強みに振れます。学ぶ場所を選ぶときは、生成AIを訓練で使ってよいか、出たものを自分で確認する練習まであるかを聞いてください。
IT職のスキルを身につける4つのルート|費用と障害への配慮で比べる
どこで学ぶかは4つあります。費用だけでなく、体調に合わせられるかと、障害の開示や配慮を扱ってくれるかで比べてください。
| 学べる場所 | 費用 | 障害への配慮 |
|---|---|---|
| 独学 | テキスト2〜3冊で5,000〜1万円 | 無し(全部自分で調整) |
| 公的職業訓練 | 受講料0円(テキスト代は実費) | 集団授業。配慮は限定的 |
| プログラミングスクール | 10万円台〜60万円台 | 開示や面接の練習は扱わない |
| 就労移行支援 | 0円〜月37,200円(世帯の所得で3段階) | 体調・開示・配慮まで相談できる |
- 独学|費用は最小。ただし続くかどうかが分かれ目
- 株式会社SAMURAIが2019年に行った調査(n=298)では、プログラミング学習者の87.5%が挫折またはつまずきを経験し、独学者のつまずき理由で最も多かったのは「気軽に質問できる環境がなかった」で49%でした。AIに聞ける分この壁は下がりましたが、返ってきた答えが合っているかの判断と、机に向かう強制力は残ります。
- 公的職業訓練(ハロートレーニング)|離職中なら受講料0円
- 離職中であれば受講料は無料で、要件を満たせば職業訓練受講給付金(月10万円)を受け取りながら通える場合があります。ただし集団授業でペースが決まっており、体調の波に合わせる仕組みはありません。要件は収入や資産で決まるので、ハローワークで確認してください。
- プログラミングスクール|在職中でも使えるのが強み
- 3つのうち、まだ辞めていない人が使えるのはここだけです。教える内容は充実していますが、障害の開示や合理的配慮の相談は扱いません。体調の波を前提にした進め方が必要なら、この点を先に確認してください。
- 就労移行支援|学習と就職活動、体調の相談を1か所でできる
- 離職中・求職中の人が対象です。学習だけでなく、手帳の申請、開示するかの相談、面接で配慮をどう伝えるかまで一緒に進められるのがほかの3つと違う点です。利用料は世帯の所得に応じた負担上限月額で決まり、市町村民税非課税の世帯は0円です。

IT職を学べる就労移行支援|狙う職種別の候補
就労移行支援を選ぶ場合、狙う職種で候補が変わります。ここでは公式情報で学習内容を確認できるところを挙げます。
プログラマー・システムエンジニアを狙うなら

就労移行ITスクールは、プログラミング・Web制作・動画編集・資格取得まで扱い、20都道府県46拠点で通えます(2026年8月時点の公式ページ集計)。公表している定着率は96%です。学べる範囲が広いので、開発とWeb制作のどちらに進むかを決めきれていない段階でも入りやすいのが特徴です。
見学では、Java・PHP・Python・JavaScript のどれをどの範囲まで学べるか、Git(変更履歴の管理)やSQL(データの取り出し)まで触れるか、作ったものを就職活動でどう見せる形にしてくれるかを聞いてください。実際の評判は就労移行ITスクールの評判にまとめています。
開発寄りで学ぶ範囲を広く取りたい方へ
Webデザイナー・コーダーを狙うなら

atGPジョブトレIT・Webは、Web制作の実践課題に取り組める就労移行支援です。公表している就職率は98%で、拠点は東京・大阪に限られます。作ったものを応募時に見せる形まで整えられるので、この記事で書いた「成果物と、その説明」を用意する場所として使えます。
見学では、どんな制作課題があるか、納期のある進め方を練習できるかを聞いてください。
Web制作の課題で成果物を作りたい方へ
データ・AIを狙うなら(枠が少ないので条件を確認してから)
AI・データサイエンスに特化した就労移行支援としてはNeuro Diveがあります。ただし学習の負荷が高く、未経験の枠自体がとても少ない分野です。体調が安定していて、数字を扱うことが苦にならない場合の選択肢と考えてください。当サイトはこのサービスと提携していないため、詳細は評判の記事にまとめています。
どの職種を狙う場合も、1社だけ見て決めないでください。実際に足を運んで初めて分かるのは、支援員との相性、カリキュラム名ではなく実際に何を作るか、通い続けられるかの3つです。見学や相談は無料で、かかるのは交通費くらいです。
「見学に行ったら断りづらいのでは」と身構えるかもしれませんが、見学に来た方のうち通所まで進むのは半分以下です(事業所によって差があります)。合わないと感じたら、そのまま帰って別のところを見に行って大丈夫です。
学ぶ場所は同じ基準で比べてください。
障害者雇用のIT職に応募するとき|手帳・開示・頼める配慮
スキルを用意しても、ここを決めていないと選考で止まります。IT職は在宅勤務や勤務時間の調整がしやすい職種なので、何を頼みたいかを先に言葉にしておくと、応募先の絞り込みが早くなります。
頼める配慮は思いつきではなく、厚生労働省が公表している「合理的配慮指針事例集」に、企業が実際に行っている例として載っています。IT職で使いやすいものを挙げます。
- 指示を一つずつ、口頭ではなく文字で出してもらう
- 急な仕様変更は、いまの作業が一区切りつくまで待ってもらう
- 音や視線が気になる場合、静かな席・耳栓やヘッドフォン・衝立を認めてもらう
- 通院に合わせた勤務時間、短時間から始めて段階的に延ばす
運営側の視点面接で配慮を伝えるとき、「苦手です」で止めずに「こうしてもらえれば進みます」までをセットにすると受け取られ方が変わります。企業が知りたいのは、困りごとそのものより、どう手当てすれば戦力になるかです。
開示するかどうかは、IT職の場合は開示(オープン就労)を選ぶ人が多くなります。成果物で評価されるぶん、配慮を頼んでも任される仕事が狭まりにくいためです。判断の材料は別の記事にまとめています。


まとめ|障害者雇用のIT職は、作ったものを見せられるかで決まる
障害者雇用枠のIT職は、未経験からでも届きます。分かれ目はどの枠を狙うかと、作ったものを説明できるかの2つです。
IT事務・サポートから入って働きながら学ぶのか、開発・制作を狙って先に成果物を作るのか。ここが決まらないと学ぶ内容も決まりません。手帳がまだなら、同時に自治体へ申請してください(交付までおおむね2か月)。
離職中なら就労移行支援か公的職業訓練、在職中ならプログラミングスクールが対象になります。見学では「何を作るか」「生成AIを使ってよいか」「作ったものを面接でどう見せるか」の3つを必ず聞いてください。
大きなものでなくて構いません。何を作り、なぜその作りにして、どこでつまずいて直したかを1分で話せる状態にします。これが面接で出す材料になり、頼みたい配慮とセットで伝える形にします。


障害者雇用のIT職(未経験)に関するよくある質問
- 30代・40代の未経験でもIT職になれますか?
-
なれますが、20代よりハードルは上がります。育てる前提の採用が減り、入ってすぐ担当できることを見られるためです。独学だけで挑むより、半年から1年かけて説明できる成果物を用意してから応募するほうが、結果として早くなります。
- 障害者雇用枠のIT職で在宅勤務はできますか?
-
職種によります。プログラミングやWebデザインのように作ったもので評価できる仕事は在宅の求人が多い一方、キッティングなど物に触る仕事は出社が前提です。在宅を希望するなら、開発・制作寄りの職種を狙うほうが選択肢が増えます。
- 公的職業訓練と就労移行支援、どちらがいいですか?
-
短期間で詰め込みたいなら公的職業訓練、体調の波に合わせながら、開示や面接の伝え方まで一緒に整えたいなら就労移行支援です。未経験からIT職は学習時間がかかるので、通いきれるかで選んでください。どちらもハローワークの同じ窓口で相談できます。
- 障害者手帳がないとIT職には応募できませんか?
-
障害者雇用枠の求人は原則として手帳が要ります。ただし一般雇用枠なら手帳がなくても応募でき、就労移行支援も手帳なしで使えます(医師の診断書と自治体の判断があれば利用できます)。手帳の申請と学習は同時に進められます。
- AIが書けるなら、いまからプログラミングを学ぶ意味はありますか?
-
あります。ただし理由が変わりました。AIが出したコードが正しいかを判断し、どこが問題かを切り分け、責任を持って直せる人が求められています。読めないと使えないので、基礎は要ります。逆に、手順が決まった仕事ほど自動化されやすいので、そこで止まらない前提で学ぶ時間を確保してください。
参考にした公的資料
- 厚生労働省「障害者雇用対策」(法定雇用率と事業主の義務) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/index.html (2026年8月21日確認)
- 厚生労働省「ハロートレーニング」(公的職業訓練の種類と対象) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/hellotraining_top.html (2026年8月21日確認)
- 厚生労働省「合理的配慮指針事例集【第六版】」(発達障害・採用後の事例。指示を一つずつ出す/急な変更は区切りまで待つ/耳栓やヘッドフォン・衝立 ほか) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001679527.pdf (2026年9月4日確認)
- 厚生労働省「障害者の利用者負担」(世帯所得に応じた負担上限月額) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/hutan1.html (2026年9月4日確認)
- 総務省「令和7年版 情報通信白書」(生成AIの業務利用。プログラミングコードの生成やバグ修正 日本38.9%/米国86.0%) https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd112220.html (2026年9月4日確認)
- 「バイブコーディング」=AIに日本語で指示してコードを書かせる進め方。AI研究者アンドレイ・カルパシーが2025年2月にXへ投稿したのが初出で、Collins English Dictionary の「2025年の言葉」に選ばれた(2026年9月4日確認)
- 株式会社SAMURAI「プログラミング学習の挫折に関するアンケート」(2019年8月・n=298。87.5%が挫折またはつまずきを経験/独学者のつまずき理由の最多は「気軽に質問できる環境がなかった」49%) https://www.sejuku.net/blog/143790 (2026年9月4日確認・民間調査)
- ※ この記事は、就労移行支援の運営に5年以上携わった経験と、各事業所・公的機関が公表している情報をもとに作成しています。評価基準や情報の扱い方は運営者情報・編集方針で公開しています。
- ※ 就労移行支援の利用条件・自己負担額・在宅訓練の可否は、お住まいの自治体の判断によって異なります。最新の条件は自治体の障害福祉窓口または各事業所にご確認ください。









