就労移行支援の個別支援計画とは?配慮を書いてもらう頼み方と見直し

就労移行支援の見学で「そこは配慮できます」と言われて、通い始めてからもう一度同じ説明をした。担当者が代わって、前の話が伝わっていない。就労移行支援を使う人から見ると、こういうことが起こります。

口で伝えた内容は、引き継ぎの中で短い言葉になります。「音がつらい」は残っても、「どの席なら大丈夫か」までは残りにくい。ここを埋める書面が、個別支援計画です。就労移行支援では「就労移行支援計画」という名前で作られます。

この記事では、その計画を誰が作り、いつ手元に来て、どう頼めば配慮が書かれるのかを、制度の条文で確かめた範囲でまとめます。数字や手続きは、指定基準の省令と障害者総合支援法に当たって確認しました(出典は記事末)。

この記事でわかること
  • 個別支援計画は誰が作り、いつ手元に来るのか
  • 申請のときの「サービス等利用計画」との違い
  • 同意を求められたときに読む5つのところ
  • 配慮を「動作」の形で書いてもらう頼み方
  • 書いてもらえないときに相談できる先
目次

結論|個別支援計画は、あなたが同意しないと決まらない書面

個別支援計画は、通う事業所のサービス管理責任者が作ります。作り方も決まっていて、原案を本人に説明し、文書で同意を得て、できあがった計画を本人に渡すところまでが事業所のやることとして定められています。計画を変えるときも、同じ手順をもう一度通ります。

発達障害のある人が就労移行支援に頼む配慮は、音や光、予定の変わり方、体調の波など、日によって出方が変わるものが多くなります。口で伝えただけだと「その日の相談」で終わり、次の担当者には残りません。計画に書いてあれば、合理的配慮として何をするのかが文字で残ります。つまり、同意を求められる場面が必ずあります。そこは意見を言える場です。「この一行を足してほしい」と伝えるのは、手続きから外れた頼みごとではありません。

  • 作るのは、通う事業所のサービス管理責任者
  • 原案の説明を受け、文書で同意してから支援が始まる
  • できた計画は本人に交付される(手元に残る)
  • 就労移行支援では3か月に1回以上見直す
  • 変更するときも、説明・同意・交付をもう一度行う

計画に何を書いてもらうかは、事業所を決めるときから始まっています。

申請のときの「サービス等利用計画」とは別の書面

「計画」と呼ばれる書面は2つあります。名前が似ているので、申請のときに作ったから事業所にも伝わっているはず、と考えて話が食い違うことがあります。作る人も、出す先も違います。

誰が・いつ・何をサービス等利用計画個別支援計画(就労移行支援計画)
作る人相談支援専門員(相談支援の事業所にいる担当者)。自分で作って出せる場合もあります通う事業所のサービス管理責任者
作る時期受給者証の申請のとき事業所に通い始める前
書かれること使う障害福祉サービスの種類と量その事業所での目標と達成時期、支援の内容、進めるうえでの留意事項
出す先・渡す先市区町村に出す本人と、相談支援の事業所などに交付される

配慮の中身が書かれるのは、事業所が作る個別支援計画のほうです。

作られ方は、面接から交付まで5つの段取り

ASD・ADHDのある人が「困っていることはありますか」と急に聞かれて、その場で全部を言葉にするのは簡単ではありません。段取りを知っておくと、どこで何を言えばよいかが決まります。計画は、いきなり文章が出てくるわけではありません。省令では、次の順番で作ることになっています。ここを知っておくと、どの場面で何を言えばいいかが分かります。

  • 面接:できること、環境、生活の状況を確かめます。この聞き取りは面接で行うことになっていて、事業所は面接の趣旨を説明し、理解を得たうえで進めます
  • 原案づくり:本人と家族の意向、支援の方針、課題、目標と達成時期、進めるうえでの留意事項を書いた原案が作られます
  • 会議:本人と、支援に当たる担当者が集まる会議を開き、意向を改めて確認し、原案への意見を聞きます
  • 同意:原案の説明を受けて、文書で同意します
  • 交付:できあがった計画が本人に渡されます

面接で話した内容が、そのまま配慮の書かれ方に効きます。発達障害の特性は日によって出方が変わるので、平均的な説明より、いちばん困った日の場面を1つ具体的に出すほうが、計画に落ちやすくなります。「だいたい大丈夫です」と答えた項目は、配慮として書かれません。

運営側の視点運営側の視点

目標と達成時期は、事業所が実績を出すための欄でもあります。だからこそ、自分が納得していない目標を、そのまま同意しないことが大事です。

面接の前に、困りごとを3つの形にしておく

計画の中身は、最初の面接で話した内容がもとになります。その場で思い出そうとすると、いちばん困っていることほど言葉にならないことがあります。紙に書いて持っていくと漏れにくくなります。書くのは、次の3つです。

  • 場面:いつ、どこで、何が起きたか(「午後、人が増える時間に、指示が耳に入らなくなる」)
  • 頻度:週に何回くらい起きるか。毎日なのか、特定の曜日なのか
  • すでに試したこと:効いた工夫と、効かなかった工夫(「耳栓は効いた。席を移動するのは言い出せなかった」)

効かなかった工夫まで書くのは、同じ提案を繰り返されないためです。事業所側は、本人が何を試したかを知らないまま提案します。ここが埋まっていると、話が1周ぶん早く進みます。

運営側の視点運営側の視点

「困っていることはありますか」と聞かれて、その場で全部は出てきません。紙に書いて渡すのは、面接では普通のやり方です。読み上げなくても構いません。

同意する前に、目標・配慮・通所日数・連絡方法・担当者を確かめる

原案は、その場で読んで構いません。次の5つが書かれているかを見ると、あとで困りにくくなります。

  • 目標と達成時期が、自分の言った内容と合っているか
  • 配慮が動作で書かれているか(「聴覚過敏に配慮」ではなく「席を入口から遠い側にする」)
  • 通所日数と、増やすときの進め方が書かれているか
  • 体調が崩れたときの連絡の仕方が書かれているか(電話か、アプリか)
  • 担当者の名前と、変わったときに誰が引き継ぐか

その場で決められないときは、持ち帰って読みたいと言って構いません。同意は文書で行うもので、急いで書かなければならない決まりはありません。

配慮は、困りごとの名前ではなく動作で書いてもらう

「音がつらいです」とだけ伝えると、書面には「聴覚過敏あり」のような言葉で残ります。読んだ次の担当者に、何をすればいいかは伝わりにくい。頼むときは、事業所の人がそのまま動ける形にします。

伝えたいこと計画に書いてもらう形
音がつらい席を入口から遠い側にする。イヤーマフの使用を認める
予定が急に変わると混乱する予定の変更は前日までに、口頭ではなく文字で伝える
体調に波がある休むときの連絡はアプリで行う。電話はしない
通所日数を増やしたい週3日を2か月続けられたら、週4日にするか面談で相談する
分からないときに聞けない質問は所定の用紙に書いて渡し、その日のうちに返事をもらう

書けば必ず通るわけではありません。部屋の広さ、職員の数、ほかの利用者との兼ね合いで、できないこともあります。断られたときは、できない理由と、代わりにできることを聞いて、その代わりのほうを書いてもらってください。断られたことだけが残ると、次の担当者には理由が伝わりません。

IT特化型の就労移行支援では、学ぶ内容と進み方も書いてもらう

プログラミングやWebデザインを学べる就労移行支援に通う場合、計画に書いてもらうのは配慮だけではありません。原案には目標と達成時期を書く欄があります。ここが「パソコンスキルの習得」で終わっていると、3か月後に何ができていれば順調なのかを、誰も判断できません。

頼むときは、期間と成果物の形まで入れます。書き方の例は次のとおりです。

  • 「3か月でHTMLとCSSの基礎を終え、静的なページを1枚作る」
  • 「6か月で、応募に使える制作物を1本仕上げる」
  • 「週1回、作ったものを見てもらう時間を取る」
  • 「就職活動を始める時期を、9か月目に置いて逆算する」

事業所によって、教材の進め方も、見てもらえる回数も違います。だからこそ、通い始めてから「思っていた進み方と違う」となる前に、計画の欄で確かめておくほうが早いです。

障害者手帳と、開示するかどうかの判断も計画に書ける

就職活動の段階になると、障害者雇用で応募するか、一般雇用で応募して障害を開示しないかという判断が出てきます。この判断をいつ決めるか、誰と相談するかも、計画の目標として書いておけます。就労移行支援そのものは障害者手帳が無くても使えますが、障害者雇用枠で働くには原則として手帳が要ります。申請から交付まで時間がかかるので、手帳を申請する時期も計画に入れておくと動きやすくなります。

見直しは3か月に1回以上。変えるときも同意が要る

就労移行支援では、計画を3か月に1回以上見直すことになっています。ふだんから定期的に本人と面接し、その結果を記録することも決まりに入っています。半年先まで話す場が無い、という制度ではありません。

計画を変更するときは、原案の説明からやり直します。説明を受けて、文書で同意して、新しい計画を受け取る。ここまで最初と同じです。

  • 次の見直しまで待つ必要はない。困った日に言ってよい
  • 面接の予定がしばらく無いと感じたら、こちらから頼んでよい
  • 言いたいことが複数あるときは、紙に書いて持っていくと漏れにくい

書いてもらえない、話が通らないときの相談先

頼んでも計画に反映されない、説明が無いまま進む。そういうときに使える窓口があります。

  • 事業所の苦情窓口:就労移行支援の事業所は、利用者や家族からの苦情を受け付ける窓口を置くことが定められています。受け付けた内容は記録されます
  • 相談支援専門員:サービス等利用計画を作った担当者です。事業所との間に入ってもらえます
  • 市区町村の障害福祉担当窓口:受給者証を出した窓口です。事業所への調査や指導につながる場合があります

どれも、通うのをやめる前に使える手です。事業所を変えるかどうかは、そのあとで決めても間に合います。

まとめ|計画に書いてもらえば、担当者が代わっても残る

  • 個別支援計画は、原案の説明・文書での同意・交付という手順で決まる
  • 申請のときのサービス等利用計画とは、作る人も渡す先も違う
  • 同意の前に読むのは、目標と達成時期、配慮の書き方、通所日数、連絡の方法、担当者
  • 配慮は「困りごとの名前」ではなく、事業所の人が動ける形で書いてもらう
  • 見直しは3か月に1回以上。困った日に言ってよい

口で伝えた話は短くなります。書面に残った話は、次の担当者が読めます。この違いが、通い続けるあいだずっと効いてきます。

就労移行支援の個別支援計画に関するよくある質問

個別支援計画は見せてもらえますか?

できあがった計画は本人に交付されます。手元に来ていない場合は、事業所に渡してほしいと伝えてください。

内容に納得できないときは、同意しなくてもよいですか?

原案は説明を受けたうえで、文書で同意する決まりです。納得できないところがあれば、同意の前に伝えてください。その場で決められないときは、持ち帰って読みたいと言って構いません。

計画に書けば、配慮は必ずしてもらえますか?

書けば必ず通るわけではありません。設備や職員の数でできないこともあります。断られたときは、できない理由と、代わりにできることを聞いて、代わりのほうを書いてもらってください。

見直しはどのくらいの間隔でありますか?

就労移行支援では、3か月に1回以上見直すことになっています。ふだんも定期的に面接を行い、結果を記録することが決められています。

家族が代わりに同意することはできますか?

説明は本人か家族に行われますが、文書で同意するのは本人です。家族だけで決める手続きにはなっていません。

事業所を移ったら、計画はどうなりますか?

個別支援計画は事業所ごとに作られます。移った先の事業所で新しく作り直すことになります。利用できる期間の原則2年は、事業所を移っても最初に通い始めた日から数え続けます。

  • 指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第58条・第184条(就労移行支援計画の作成、文書による同意、交付、3か月に1回以上の見直し) https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171 (2026年9月24日確認)
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第5条第23項・第22条第4項・第5項(サービス等利用計画案の提出) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123 (2026年9月24日確認)
  • この記事は制度の決まりをまとめたものです。書類の名前や渡され方、面談の進め方は事業所と自治体によって違います。実際の運用は、通う事業所と、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で確認してください。

※ この記事は、就労移行支援の運営に5年以上携わった経験と、公的機関が公表している情報をもとに作成しています。評価基準や情報の扱い方は運営者情報・編集方針で公開しています。

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