「就労移行支援に通ってみたいけれど、障害者手帳を持っていない」 「まだ診断を受けたばかりで、自分が対象なのか分からない」
そう悩んで、問い合わせを躊躇していませんか? 実は、就労移行支援を利用するために「障害者手帳」は必須ではありません。
この記事では、利用条件の3つを先に示したうえで、大学生・アルバイト中・休職中といった立場ごとに使えるのか、申請はどう進むのかを書きます。「自分は対象外だ」と決める前に確認してください。
- 利用条件は3つだけ(年齢・対象となる障害・就労の意思)
- 手帳が無いときに代わりに出す書類
- 大学生・アルバイト中・休職中は使えるのか
- 申請から利用開始までの4ステップ
結論|利用条件は3つ。障害者手帳は条件に入っていない
就労移行支援の利用条件は、年齢・就労の意思・障害や難病があることの3つです。障害者手帳は条件に入っていません。手帳が無くても、主治医の意見書など「支援が必要だ」と示せる書類があれば受給者証は出ます。実際に迷いやすいのは手帳より、いまの自分の立場で使えるのかのほうです。
| いまの状況 | 使えるか | 自治体に何を説明するか |
|---|---|---|
| 離職中・求職中 | 使える | 説明することは特にない。標準の対象 |
| 障害者手帳がない | 使えることが多い | 主治医の意見書か自立支援医療受給者証で、支援が必要なことを示す |
| 診断がまだ(グレーゾーン) | 医師の判断による | 確定診断でなくても、就労に困難があると医師が書けば通る場合がある |
| 大学生・専門学生 | 卒業年度なら可の場合あり | 学校の就職支援では足りない理由を、具体的に伝える |
| アルバイトをしている | 時間と目的による | 週の勤務時間と、そのアルバイトが就職につながらない理由 |
| 休職中 | 復職目的なら不可 | 元の職場に戻らず転職する前提であることを伝える |
| 65歳以上 | 原則使えない | 65歳未満が条件。例外の運用は自治体に確認する |
表の「使えるか」は、最終的にお住まいの市区町村が判断します。同じ状況でも自治体によって運用が違うので、事業所の見学で「自分の自治体だとどう説明すればいいか」を聞くのがいちばん早い確認方法です。
なぜ手帳が無くても使えるのか(制度の成り立ち)
利用条件の話をする前に、そもそもこのサービスが「どういう仕組み」なのかを簡単に理解しておきましょう。ここを理解すれば、なぜ「手帳なしでも使えるのか」が見えてきます。
国が税金で運営する「就職予備校」
就労移行支援とは、障害者総合支援法に基づく公的な福祉サービスです。 簡単に言えば、「障害や病気のある人が、一般企業への就職を目指してスキルを学ぶための学校」です。
- 運営費
-
9割以上が公費(税金)で賄われています。
- 目的
-
あなたに「納税者(就労者)」になってもらうこと。
- だから
-
「今は働けないが、将来働きたい意思がある人」なら、国は喜んで支援したいのです。手帳の有無という「形式」よりも、「働く意思と必要性」が重視されます。
就労移行支援の利用条件は「3つ」だけ
法律で定められた条件は非常にシンプルです。以下の3つ全てに当てはまる方が対象です。
- 年齢: 18歳以上、65歳未満であること。
- 意思: 一般企業への就職(または開業)を目指していること。
- 状態: 障害や難病があり、単独での就職活動が困難であること。
重要なのは「3」の証明方法
この「3. 障害がある状態」を証明するために、必ずしも「障害者手帳」は必要ありません。ここを詳しく解説します。
手帳が無い場合に、代わりに出す書類
受給者証を出してもらうために自治体が見るのは、「支援が必要だと分かる書類が1つあるか」です。次のいずれかがあれば足ります。
- 障害者手帳(いちばん話が早い。ただし必須ではない)
- 障害年金の証書(すでに受給している場合)
- 自立支援医療受給者証、または主治医の意見書・診断書(意見書はA4用紙1枚程度の簡易なもので済むことが多い)
意見書で申請するのは抜け道ではなく、制度どおりの手順です。後ろめたく思う必要はありません。確定診断が出ていないグレーゾーンの状態でも、就労に困難があると主治医が判断すれば意見書は書かれます。
手帳を待つべきか、意見書で先に始めるべきか。意見書の頼み方、自治体ごとの運用の差、手帳の審査が非該当だったときにどうなるかは、別の記事にまとめています。

就労移行支援だけでなく、自立支援医療も失業保険も、障害者手帳を条件にしていません。手帳が要る制度と要らない制度の分かれ目は、早見表にまとめてあります。

大学生・アルバイト中・休職中は使えるのか
ここが実際にいちばん多い迷いどころです。3つとも「原則は不可、ただし事情によっては通る」という形なので、何をどう説明するかで結果が変わります。
大学生・専門学生(在学中)
- 原則
-
学業が本分なのでNG。
- 例外
-
「大学のキャリアセンターの支援では足りない」と自治体が判断した場合、卒業年度の後半から利用できるケースがあります。説明するときは「就活がうまくいかない」で止めず、面接で何が起きるか(雑談が続かない、複数社の日程管理が崩れる)、体調にどう出るかまで具体的に伝えてください。学生相談室や主治医の記録があれば持っていきます。
アルバイトをしている人
- 原則
-
「働けている」とみなされるためNG。
- 例外
-
「いまのアルバイトは生活費のためで、将来の就職につながらない」「週数時間の短時間勤務」などの場合、併用が認められることがあります。判断材料になるのは週の勤務時間と、通所と両立して体調が保てるかです。隠して働くのはやめてください。受給者証の更新時に分かると、利用そのものが止まります。
休職中の人
- 原則
-
復職(元の会社に戻る)目的では使えません(リワークを使えと言われます)。
- 例外
-
「復職せずに、別の会社へ転職する」という前提であれば、利用できる自治体もあります。元の職場に戻るならリワークが担当で、就労移行支援の対象外です。転職に切り替えるなら、戻らない意思を主治医と先に共有しておくと、意見書の内容と自治体への説明がそろいます。
なお、いま働いていて利用できないと分かった場合でも、選択肢がゼロになるわけではありません。在職中にITスキルを身につける方法は、別の記事で整理しています。

申請から利用開始までの4ステップ
「自分は対象になりそうだ」と思ったら、以下の手順で進めます。手続きは事業所が手伝ってくれます。
運営側の視点順番として、自治体の窓口より先に事業所へ行くほうが早く進みます。窓口では「事業所は決まっていますか」と聞かれることが多く、決まっていないと出直しになります。事業所を先に見ておけば、その自治体で通る書類の組み合わせも一緒に教えてもらえます。
- 見学・相談: 行きたい事業所(Neuro DiveやatGPなど)を見に行き、「利用したい」と伝える。
- 申請: お住まいの自治体の「障害福祉課」へ行き、利用申請をする。(※診断書はこのタイミングで提出)
- 認定調査: 自治体の職員と簡単な面談を行い、現状を伝える。
- 受給者証の発行: 2週間〜1ヶ月ほどでパスが届き、正式に通所開始。
ここまで挙げた事業所は、どれも公式情報で確認できる範囲の違いです。
1社だけ見て決めず、2〜3社を見学・体験して比べてください。パンフレットや口コミでは分からず、実際に足を運んで初めて分かるのは次の3点です。
- 支援員との相性(毎日顔を合わせる相手が、自分に合う話し方をするか)
- 学習内容(カリキュラム名ではなく、実際に何を作り、どう就職につなげるのか)
- 通い続けられるか(通所ルートの負担、教室の音や人数、自分の体調との相性)
見学や相談は無料で、かかる費用は交通費くらいです(体験利用の扱いは事業所や自治体によって異なるため、申し込み時に確認してください)。
「見学に行ったら、断りづらくなるのでは」と身構えてしまうかもしれません。でも実際のところ、見学に来た方のうち通所まで進むのは半分以下です(事業所によって差はあります)。
「学習内容が思っていたものと違った」「難しくてついていけなそうだった」「毎日通うのはしんどそうだった」——見送る理由は人それぞれで、断られるのは事業所にとって日常です。気を遣う必要はありません。合わないと感じたら、そのまま帰って別の事業所を見に行けば大丈夫です。
利用が決まると、通う事業所が個別支援計画を作ります。配慮してほしいことは、この書面に書いてもらえます。


まとめ|条件に当てはまるか迷ったら、自治体より先に事業所に聞く
利用条件は年齢・就労の意思・障害や難病の3つで、障害者手帳はそこに入っていません。迷いやすいのは条件そのものより、大学生・アルバイト中・休職中といった自分の立場をどう説明するかのほうです。
確実な答えは、自治体の窓口より事業所に聞くほうが早いです。事業所は同じ自治体の申請を何件も通しているので、「この市なら意見書でいけます」「ここは手帳を求められます」と具体的に答えられます。見学のときに、いまの立場(在学中・アルバイト中・休職中)と手帳の有無をそのまま伝えてください。障害を開示して障害者雇用枠を目指すのか、一般雇用枠で合理的配慮を相談するのかも、この段階から一緒に考えられます。


あわせて、関連記事もご覧ください。
あわせて、大人の発達障害グレーゾーンとは?仕事が辛い原因と診断なしで使える支援もご覧ください。
条件を満たしているなら、次は事業所選びです。
就労移行支援の利用条件に関するよくある質問(FAQ)
- 診断書代はかかりますか?
-
はい、病院によりますが3,000円〜5,000円程度かかります(自己負担)。ただし、手帳取得の診断書よりは安価で簡易的なもので済む場合が多いです。
- 障害者手帳を持っていなくても、就職時は「障害者枠」を使えますか?
-
就職の段階では、原則として手帳が必要です。企業の障害者雇用枠は法定雇用率にカウントするための採用なので、応募条件に手帳の所持が入っていることがほとんどです。
ただし、就労移行支援の利用自体は診断書や意見書があれば手帳なしで始められます。通所しながら手帳を申請し、就職活動までに間に合わせる方は珍しくありません。手帳を取らずに一般枠で就職する道もあるので、どちらを目指すかは見学時に相談してください。
- グレーゾーン(診断なし)でも使えますか?
-
「医師の意見書」さえあれば可能です。まずは心療内科を受診し、「就労移行支援を使いたいので意見書を書いてほしい」と相談してみてください。
参考にした公的資料
- 厚生労働省「障害福祉サービスについて」(就労移行支援の対象者・支援内容) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html (2026年8月21日確認)
- 厚生労働省「障害者の利用者負担」(世帯所得に応じた負担上限月額) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/hutan1.html (2026年8月21日確認)
※ この記事は、就労移行支援の運営に5年以上携わった経験と、各事業所・公的機関が公表している情報をもとに作成しています。評価基準や情報の扱い方は運営者情報・編集方針で公開しています。
※ 本記事は特性の理解と働き方の工夫を扱うものであり、医学的な診断・治療の助言を行うものではありません。心身の不調が続く場合は医療機関にご相談ください。
※ 就労移行支援の利用条件・自己負担額・在宅訓練の可否は、お住まいの自治体の判断によって異なります。最新の条件は自治体の障害福祉窓口または各事業所にご確認ください。






