適応障害で復職が怖い|復職できるかは、つらい原因がなくなるかで決まる

適応障害で復職が怖い|復職できるかは、つらい原因がなくなるかで決まる

「復職の日が近づくと、動悸がして眠れない」「オフィスの近くに行くだけで、涙が出てくる」

休職して体調が戻ってきたはずなのに、復職を考えると体が拒否する。そんな自分を「甘えている」と責めていませんか。

その恐怖心は甘えではなく、体が出している信号です。適応障害は、原因になっているつらさの原因がはっきりしている状態を指します。その原因が職場に残ったままなら、復職しても同じことが起きます。逆に、原因がなくなるなら復職できます。

つまり復職できるかどうかは気持ちの強さではなく、そのつらい原因が会社の側でなくなるかどうかで決まります。この記事では、その判断のしかたと、決める前に確認しておく期限を説明します。

この記事でわかること
  • 復職できる人と、しないほうがよい人を分ける4つの確認
  • 決める前に確認しておく3つの期限(休職の満了・傷病手当金・障害者手帳)
  • 復職しないと決めたあと、どこから進めるか
  • 次の職場で同じことを繰り返さないための伝え方
目次

結論|復職できるかは、つらい原因がなくなるかで決まる

適応障害は、はっきりしたつらさの原因があって、そこから心身の不調が出ている状態です。だから休職して離れている間は落ち着き、その場所を思い出すと症状が戻ります。あなたの回復が足りないのではなく、原因がまだそこにあるということです。

ここから導ける判断は1つだけです。その原因が会社の側でなくなるなら復職できる。なくならないなら復職しない。「気合いで乗り切れるか」「周りに迷惑をかけないか」は、この判断の材料になりません。

復職が怖いという感覚も、材料の1つです。体は毎日その職場を見てきたので、頭より先に答えを出していることがあります。ただし感覚だけで決めると後で揺れるので、次の4つで裏を取ってください。

復職できるかは、原因・異動・会社の返事・主治医で決まる

順番に確認します。4つのうち2つ以上が「いいえ」なら、復職しない側で考えるほうが現実的です。

つらい原因を1つに絞れるか

「上司のAさんの叱り方」「毎日20件を超える電話の一次対応」のように、人・業務・場所のどれかで1つに絞れるかを確かめます。「なんとなく全部つらい」の状態なら、まだ主治医と整理する段階です。原因が言えないうちは、復職するかしないかを決められません。

原因は、異動や担当替えでなくなるか

なくせるものと、なくせないものがあります。担当業務や座席は変えられますが、会社の文化や職種そのものの性質は変わりません。電話対応が原因なら、担当から外してもらえる可能性があります。「常に人と話し続ける職種」そのものが原因なら、同じ会社の中では変えられないことが多くなります。

会社は、異動や業務の変更をすると答えたか

ここは気持ちではなく、返ってきた言葉で判断します。産業医面談や人事との復職面談で、「異動できます」「業務を外せます」と具体で答えたか。「様子を見ながら」「まずは戻ってから考えましょう」しか返ってこないなら、実質は「配慮なしで戻ってください」という意味です。

運営側の視点

異動の枠は年度単位で先に決まっていることが多く、復職の相談が出てから新しく作られることはあまりありません。「まずは戻ってから考えましょう」は、悪意ではなく枠が無いという意味であることもあります。ただ、戻る側から見れば、配慮なしで戻るのと同じです。返ってきた言葉は、その場で書き留めておいてください。

主治医は、元の部署への復職を認めているか

主治医は復職の可否について意見書を書く立場です。「復職可」と「同じ部署へ戻って可」は別のことなので、診察のときに「元の部署への復職でも大丈夫か」と、部署まで含めて聞いてください。ここで主治医が難色を示すなら、それは会社に伝えるべき材料になります。

4つの答えを並べると、だいたい次のどちらかに寄ります。

復職する側で考えてよい人

  • つらさの原因を1つの人・業務・場所で言える
  • その原因が、異動や担当替えでなくなる
  • 会社が「異動できます」「その業務を外せます」と具体で答えた
  • 主治医が、元の部署への復職でも問題ないと言っている

復職しない側で考えるほうがよい人

  • 原因が、職種そのものの性質か会社の文化にある
  • 復職面談で「まずは戻ってから考えましょう」しか返ってこない
  • 復職の話が出るたびに、体調が休職前の状態に戻る
  • 過去にも復職と再休職を繰り返している

どちらとも言えないときは、まだ4つの確認が終わっていません。特に3番目は、会社に聞かないと分からない項目です。

決める前に、休職の満了日と傷病手当金の残りを調べる

適応障害では、原因がなくなるかどうかの答えが会社から返ってくるのを待つことになります。その待っているあいだにも、休職の期限とお金の期限は進みます。知らずに過ぎると、選べたはずの道が閉じます。先に自分の日付を確かめてください。

休職はいつまでか。就業規則で満了日を確かめる

休職できる期間は会社の就業規則で決まっていて、勤続年数によって変わることがあります。満了しても復職しない場合、多くの会社で退職の扱いになります。まず就業規則を取り寄せて、自分の満了日を日付で書き出してください。ここが、他のすべての判断の締切になります。

この日付は、会社への確認にも使えます。満了日までに配慮の可否がはっきりしないなら、返事が出ないこと自体が答えです。主治医に意見書を書いてもらう時間も要るので、満了日の1〜2か月前を自分の締切にしておくと間に合います。

傷病手当金は通算1年6か月。一度復職すると再開できないことがある

健康保険の傷病手当金は、支給を開始した日から通算して1年6か月が上限です(2022年1月から通算になり、間に働いた期間があれば繰り越せます)。

退職後も受け取り続けるには、退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あり、退職日に労務不能であることが条件です。ここで注意したいのが、一度「働ける状態」になると、その後また働けなくなっても再開されないという点です。「怖いけれど一度戻ってみる」を選ぶと、退職後の受給が続かなくなる場合があります。

金額と条件は加入している健康保険(協会けんぽ、健康保険組合)で確認できます。試しに戻るかどうかを決める前に、必ず自分の保険者に問い合わせてください。

体調が戻りきらないまま期限が近づくと、焦って決めたくなります。ただ、ここで決めるのは「いつ辞めるか」ではなく「原因がなくなるかどうか」です。日付は判断を急がせるためではなく、会社の返事を待てる期間を知るために調べます。

復職しないと決めたあと、どこから進めるか

4つの確認と3つの期限を並べたら、次は進み方です。ここで効いてくるのが、辞める前と後で使える支援が入れ替わるという点です。

在職中と退職後で、使える支援が入れ替わる

決める前にもう1つ知っておくことがあります。辞める前と辞めた後では、使える支援がきれいに入れ替わります。

在職中(休職中)のあいだ使えるのは、地域障害者職業センターのリワーク支援です。費用はかからず、期間は標準で12週間。本人と会社と主治医の3者で進める仕組みなので、会社と話が付いていることが前提になります。退職した時点で、この支援は対象から外れます。

入れ替わりに使えるようになるのが就労移行支援です。こちらは離職中や未就労の方が一般就労を目指すための制度なので、在職中は原則として使えません(自治体の判断による例外はあります)。つまり職場復帰のための支援と、次の仕事を探すための支援は、退職を境に切り替わります。

つまり「まだ迷っている」段階なら、辞める前にリワークを試す道が残っています。辞めてからでは、その道は選べません。逆に、4つの確認で復職しない側がはっきりしているなら、退職後の支援に早く切り替えるほうが空白が短くなります。どちらを選ぶかの比較は次の記事にあります。

IT系の仕事へ移ることを考えているなら

在宅勤務の求人が比較的多く、指示や仕様が文章で残る進め方をとっている分野なので、音や急な予定変更、対人の密度を職種選びで下げやすいのがIT系です。未経験からどう学ぶか、経験者が戻るときに何を避けるかは次の記事にまとめています。

障害者手帳は初診日から6か月。障害者雇用枠を使うなら逆算する

次を障害者雇用枠で探す可能性があるなら、精神障害者保健福祉手帳の申請時期を先に確認します。申請には初診日から6か月を経過した日以後の診断書が必要です(厚生労働省の実施要領)。適応障害を除く規定はなく、他の精神疾患と同じ基準で判定されます。

休職に入るまでに通院を続けていれば、6か月はすでに過ぎていることが多くあります。在職中のほうが、診断書を書いてもらう主治医との関係も続いているので動きやすいです。ただし手帳を取ることと、それを会社や次の職場に伝えることは別の話で、伝えるかどうかは自分で決められます。

障害者雇用枠と一般枠のどちらで応募するか、開示をどうするかは次の記事で整理しています。

次の職場で同じことを繰り返さないために

環境を変えても、選び方と伝え方が前と同じなら同じ場所で止まります。応募の前に、次の2つを決めておいてください。

1. 「絶対に無理な条件」を、求人票の言葉で書く

今回の原因を、次の求人票で見分けられる言葉に翻訳します。「上司の叱り方」なら「評価面談の頻度と、フィードバックが文章で残るか」、「電話の一次対応」なら「電話対応の有無と、代表電話を誰が取るか」。この形にしておくと、面接で確認できる質問になります。

2. 退職理由は「環境が合わなかった」と「次はどうするか」をセットで言う

面接で適応障害に触れるかどうかは自分で決められますが、触れる場合は言い方が決まっています。病名だけを伝えると、相手は何を心配すればいいか分からないまま不安になります。

  • 前職で負担になった場面を、業務の言葉で1つ挙げる(「電話の一次対応が常時ありました」)
  • それが今どうなっているかを言う(「通院を続けて、いまは安定しています」)
  • 次の職場で何があれば働けるかを言う(「電話が業務に含まれない配置であれば力を出せます」)

3つ目まで言い切ると、相手は「受け入れられるかどうか」を判断できます。1つ目で止めると、相手の想像に任せることになります。

まとめ|適応障害の復職は、つらい原因がなくなるかで決める

復職するかしないかは、性格の問題ではなく、つらい原因がなくなるかどうかという事実の問題です。順番に確かめてください。

今日:つらさの原因を1つ書き、3つの日付を調べる

何がつらい原因かを、人・業務・場所のどれかで1つ書きます。あわせて、就業規則の休職満了日、傷病手当金の支給開始日、初診日の3つを日付で書き出します。

今週:主治医と会社に、部署まで含めて聞く

主治医には「元の部署への復職でも大丈夫か」を、会社には「その業務を外せるか」を聞きます。返ってきた言葉をそのまま書き留めてください。あとで判断材料になります。

今月:4つの確認を並べて決める

4つのうち2つ以上が「いいえ」なら、復職しない側で動き始めます。在職中か離職後かで使える制度が変わるので、辞める前に相談先を決めておくと空白ができません。

移る先を探す段階になったら、事業所は同じ基準で比べて選んでください。

復職しない選択をするなら、次の環境は同じ基準で比べる

適応障害と復職に関するよくある質問

休職中のまま、復職せずに退職してもいいですか?

できます。多くの会社に「休職期間の満了による退職」の規定がありますし、自分から退職を申し出ることもできます。復職しないまま転職活動を始めることに法的な問題はありません。ただし傷病手当金や失業給付の条件は退職日で変わるので、日付を決める前に保険者とハローワークに確認してください。

「一度戻ってみて、無理なら辞める」ではだめですか?

選べますが、代償があります。傷病手当金は一度「働ける状態」になると、その後また働けなくなっても再開されないことがあるためです。また再発したときは、前回より回復に時間がかかることが多く、次の転職活動を始める体力も落ちます。試すなら、戻る前に「どうなったら撤退するか」を日数と症状で決めておいてください。

会社に異動を頼むと、評価が下がりませんか?

配慮を求めたことを理由にした不利益な取り扱いは認められていません。とはいえ現実の空気を心配されるのはもっともです。頼み方を「配慮してほしい」ではなく「この業務を外せば、この成果を出せます」に変えると、相手は人事の判断として扱いやすくなります。産業医面談の場を使うのも有効です。

適応障害でも障害者手帳は取れますか?

申請はできます。精神障害者保健福祉手帳は、初診日から6か月を経過した日以後の診断書で申請し、症状と生活への支障の程度を見て判定されます。適応障害を除く規定はありません。ただし交付されるかどうかは判定によるので、まず主治医に「いま申請して通る状態か」を聞いてください。

転職と就労移行支援、どちらを先に考えるべきですか?

働ける体調が戻っていて、次にやりたい仕事の見当がついているなら、転職活動から始められます。体調に波があるか、未経験の分野に移りたい場合は、就労移行支援のほうが空白を作らずに進めます。判断がつかないときは、両方に相談だけしてから決めても遅くありません。

参考にした公的資料

※ この記事は、就労移行支援の運営に5年以上携わった経験と、各事業所・公的機関が公表している情報をもとに作成しています。評価基準や情報の扱い方は運営者情報・編集方針で公開しています。

※ 本記事は働き方の選択と手続きを扱うものであり、医学的な診断・治療の助言を行うものではありません。復職の可否や治療については主治医にご相談ください。心身の不調が続く場合は医療機関にご相談ください。

※ 傷病手当金・失業給付・障害者手帳の条件は、加入している健康保険や、お住まいの自治体の判断によって異なります。最新の条件は保険者・ハローワーク・自治体の窓口にご確認ください。

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この記事を書いた人

元・就労移行支援 マーケティング担当

事業所の運営側で、広報や集客実務を経験。 各事業所の『強み』と『宣伝文句』を客観的に分析・比較します。

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