休職期間に入り、少し体調が落ち着いてきた頃、医師や会社から「リワーク(復職プログラム)」を勧められて迷っていませんか?
「元の会社に戻るために頑張るべきか」
「いっそ会社を辞めて、新しいスキルを身につけるべきか」
この二択は、あなたの今後のキャリアを左右する大きな分岐点です。
本記事では、「リワーク」と「就労移行支援」の決定的な違いを比較表で整理し、今のあなたの心理状態や状況に合わせて、どちらを選ぶべきかの判断基準を解説します。
- リワークと就労移行支援の決定的な違い(比較表)
- 「復職向き」と「転職向き」の分かれ目
- 休職期間をITスキル習得に充てる第3の選択肢
結論|「復職か転職か」の二択ではない。就労移行支援でも復職を目指せる
先に結論です。就労移行支援は転職専用ではありません。厚生労働省の通知に「休職からの復職を目指す場合(復職支援型)」という枠があり、条件を満たせば休職中に復職を目的として使えます。
ですから、決めるのは「復職か転職か」ではなくどこで準備するかです。選択肢は3つあります。①医療リワーク(医療機関)②職リハリワーク(地域障害者職業センター・無料)③就労移行支援。①と②が使える状況なら、まずそちらが先になります。
【比較表】医療リワーク・職リハリワーク・就労移行支援の違い
名前は似ていますが、この2つは「ゴール(目的)」が全く異なります。
まずは以下の表で全体像を把握しましょう。
| 医療リワーク | 職リハリワーク | 就労移行支援 | |
|---|---|---|---|
| 運営 | 病院・クリニック(デイケア等) | 地域障害者職業センター(国の機関) | 民間企業・NPOなどの事業所 |
| ゴール | 復職 | 復職 | 就職・転職。条件を満たせば復職も |
| お金 | 医療費。自立支援医療を使えば1割負担 | 無料(本人・事業主とも) | 世帯所得に応じて0円〜 |
| 期間 | 医療機関による | 標準12週間。説明会から終了まで4〜6か月程度 | 原則2年まで |
| 対象 | 通院している方 | 雇用保険適用事業所に勤めている方(国や地方公共団体は対象外) | 医師の意見書などで自治体が認めた方 |
| 中身 | 認知行動療法など、治療の一環 | 生活リズムの立て直しと職場復帰の計画づくり | 専門スキルの訓練(IT等)・資格取得 |
いちばん見落とされるのが職リハリワークが無料であることです。医療リワークは治療なので医療費がかかりますが、地域障害者職業センターのリワーク支援は本人も会社も費用がかかりません。勤め先が雇用保険適用事業所なら、まずここを調べてください。
運営側の視点復職を目的に就労移行支援を使う場合、実務でいちばん時間がかかるのは3種類の書類(雇用先企業・主治医・相談支援事業所)です。とくに会社から「自社では復職支援ができない」と書いてもらう必要があり、ここで止まることが多いです。休職期間の残りが少ないなら、書類の話を先に人事へ切り出しておいてください。
- リワーク
-
マイナスになった体調をゼロに戻し、元の環境に適応するためのリハビリ。
- 就労移行支援
-
ゼロから新しいスキル(プラス)を身につけ、環境そのものを変えるための訓練。
あなたはどっち?失敗しないための選び方
「どっちに行けばいいか分からない」という方は、現在の会社への「気持ち」と「原因」で判断してください。
リワーク(復職)を選ぶべき人
- 会社の人間関係や業務内容自体は好きだ。
- 今回の休職原因は「過重労働(残業)」や「一時的なトラブル」だった。
- 「戻れるなら戻りたい」と思っている。
- → あなたに必要なのは、ストレス対処法を学び、元の場所で生き抜く力をつけることです。
就労移行支援(転職)を選ぶべき人
- 会社の人間関係や業務内容(適性)が原因で体調を崩した。
- 復職することを考えると、動悸がしたり涙が出たりする。
- 「もう二度とあそこには戻りたくない」と思っている。
- → あなたに必要なのは、我慢して戻ることではなく、「自分に合う新しい環境(職種)」へ移動するためのスキルです。


どちらに進んでも、会社に何を伝えるかは別に決める
復職でも転職でも、必ず出てくるのが開示の判断です。伝えるのは診断名ではなく、業務のどこで手が止まるかにします。
復職する場合は、戻る前に合理的配慮を会社へ頼んでください。雇用の場では障害者雇用促進法により、平成28年(2016年)4月1日から事業主に合理的配慮の提供義務があります。厚生労働省のリーフレットには「対象となる障害者は、障害者手帳を持っている方に限定されません」と明記されているので、手帳がなくても頼めます。休職の原因になった業務条件(残業、電話、急な変更)を、戻る条件として先に決めておくのが要点です。
転職する場合は、障害者雇用枠を使うかどうかを決めます。枠を使うなら原則として障害者手帳が要り、申請から交付まで1〜2か月かかります。一般雇用枠のまま、配慮だけを業務の相談として頼む進み方も残ります。
あわせて、IT特化型就労移行支援の全国ランキングもご覧ください。
就労移行支援を使うか迷っているなら、次にやることは1つだけです。
1社だけ見て決めず、2〜3社を見学・体験して比べてください。パンフレットや口コミでは分からず、実際に足を運んで初めて分かるのは次の3点です。
- 支援員との相性(毎日顔を合わせる相手が、自分に合う話し方をするか)
- 学習内容(カリキュラム名ではなく、実際に何を作り、どう就職につなげるのか)
- 通い続けられるか(通所ルートの負担、教室の音や人数、自分の体調との相性)
見学や相談は無料で、かかる費用は交通費くらいです(体験利用の扱いは事業所や自治体によって異なるため、申し込み時に確認してください)。
「見学に行ったら、断りづらくなるのでは」と身構えてしまうかもしれません。でも実際のところ、見学に来た方のうち通所まで進むのは半分以下です(事業所によって差はあります)。
「学習内容が思っていたものと違った」「難しくてついていけなそうだった」「毎日通うのはしんどそうだった」——見送る理由は人それぞれで、断られるのは事業所にとって日常です。気を遣う必要はありません。合わないと感じたら、そのまま帰って別の事業所を見に行けば大丈夫です。
休職期間を「ITスキル習得」に充てる第3の選択
もし「就労移行支援(転職)」のルートを選ぶなら、単なる療養期間にするのではなく、「ITスキル」を身につける期間にすることをおすすめします。
なぜ休職中の「IT学習」が有効なのか
メンタル不調からの社会復帰では、IT・Webスキルが復職先でも転職先でも使えます。
- 環境を選べる: リモートワークや静かなオフィスなど、メンタルに優しい環境で働きやすい。
- 対人ストレスの軽減: 電話対応や複雑な根回しが少なく、チャットや成果物ベースで評価される。
- 空白期間の正当化: 面接で「休んでいる間にプログラミングを勉強していました」と伝えることで、休職期間を「ブランク」から「研修期間」へとポジティブに変換できる。
IT特化型就労移行支援で学べること
一般的なビジネスマナーだけでなく、以下のような専門的なコースを持つ事業所が増えています。
- プログラミングコース
-
システム開発やアプリ制作を学ぶ。
- Webデザインコース
-
HP制作や画像加工ソフト(Photoshop等)を学ぶ。
- データ分析コース
-
AI活用や統計データを扱うスキルを学ぶ。
「ただ休む」のではなく「使えるスキルを増やす」。
そう考えるだけで、将来への不安は大きく軽減されるはずです。
まとめ|復職でも転職でも、休職中から使える制度がある
「休職=復職しなければならない」という決まりはありません。
制度上、復職が前提となっているリワークとは違い、就労移行支援は「今の会社を辞めて、新しい道に進む」ことを前提とした場所です。
大切なのは、世間体や義理ではなく、「半年後の自分が笑って働いているイメージ」が湧く方を選ぶことです。
もし「戻るのが怖い」と感じるなら、それは逃げではなく「進路変更」のサインです。
まずは就労移行支援の資料を取り寄せたり、見学に行ったりして、「新しい選択肢」があることを肌で感じてみてください。


「変わる」を選ぶなら、事業所は同じ基準で比べてください。
リワークと就労移行支援に関するFAQ
- 休職中でも就労移行支援は利用できますか?
-
使えます。厚生労働省の通知に「休職からの復職を目指す場合(復職支援型)」という枠があり、休職中の方が復職を目的に就労移行支援を使えます。条件は3つで、すべて満たす必要があります。①企業や地域の就労支援機関・医療機関による復職支援の実施が見込めない、または困難であること。②本人が復職を希望し、企業と、休職の診断をした主治医が、就労移行支援による復職支援で復職することが適当だと判断していること。③市区町村が、そのほうがより効果的に復職につながると判断すること。
確認には、雇用先企業・主治医・相談支援事業所からの書類が要ります。使える期間は、企業の定める休職期間の終了まで(上限2年)です。手続きの入口は、お住まいの市区町村の障害福祉窓口になります。
- リワークと就労移行支援は併用できますか?
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同じ時期に両方を使うことは想定されていません。復職支援型として就労移行支援を使う条件の1つが「企業や地域の就労支援機関・医療機関による復職支援の実施が見込めない、または困難であること」なので、職リハリワークが使える状況なら、まずそちらが先になります。どちらを使うかは、市区町村と主治医との相談で決まります。
- 医療リワークと職リハリワークの違いは?
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医療リワークは病院やクリニックが行う治療の一環で、認知行動療法などメンタルケアが中心です。医療費がかかりますが、自立支援医療(精神通院医療)はデイ・ケアも対象なので、使えば1割負担になります。
職リハリワークは地域障害者職業センター(国の機関)が行う支援で、本人も事業主も無料です。支援期間は標準12週間、説明会からプログラム終了まで4〜6か月程度。対象は雇用保険適用事業所に勤めている方で、国・地方公共団体などに勤めている方は対象外です。就労移行支援は民間の事業所が運営し、就職・転職の訓練が中心ですが、復職支援型という枠もあります。
※ この記事は、就労移行支援の運営に5年以上携わった経験と、各事業所・公的機関が公表している情報をもとに作成しています。評価基準や情報の扱い方は運営者情報・編集方針で公開しています。
参考にした公的資料
- 厚生労働省「雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務です」(改正障害者雇用促進法は平成28年4月1日施行。「対象となる障害者は、障害者手帳を持っている方に限定されません」) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000635063.pdf (2026年9月14日確認)
- 厚生労働省 障障発0331第2号(令和7年3月31日)「障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの提供に当たる者等に関する基準等について」(「イ 休職からの復職を目指す場合(復職支援型)」の対象者・利用条件3つ・確認書類3種・利用期間は企業の定める休職期間の終了まで(上限2年)) https://www.mhlw.go.jp/content/001473458.pdf (2026年9月14日確認)
- 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「リワーク支援」(本人・事業主とも無料。支援期間は標準12週間、説明会から終了まで4〜6か月程度。対象は雇用保険適用事業所に勤めている方で、国・地方公共団体・特定独立行政法人は対象外) https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/tokyo/reworkshien.html (2026年9月14日確認)
- 厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)について」(対象となる医療に外来・投薬・デイ・ケア・訪問看護等が含まれる。自己負担は1割で、世帯の所得に応じた上限月額がある) https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/dl/03.pdf (2026年9月14日確認)
※ 本記事は制度の違いと働き方の選び方を扱うものであり、医学的な診断・治療の助言を行うものではありません。復職の可否や時期は主治医の判断によります。
※ 就労移行支援の利用条件・自己負担額・在宅訓練の可否は、お住まいの自治体の判断によって異なります。最新の条件は自治体の障害福祉窓口または各事業所にご確認ください。









