「障害のことを、どこまで話せばいいのだろう」「配慮を求めすぎると落とされるのではないか」
障害者雇用の面接を前に、この2つで止まる方は多くいます。答えから言うと、話すのは診断名の詳しさではなく、業務にどう影響するかと、何があれば働けるかの2つです。
面接官が見ているのも、経歴の華やかさではありません。採用したあとに安定して働けるか、その一点です。
この記事では、どこまで話すかの線の引き方と、必ず聞かれる5つの質問への答え方を並べます。やりがちな答え方も一緒に書いたので、自分の答えと見比べてください。
- 障害のことをどこまで話し、どこから話さなくてよいか
- 必ず聞かれる5つの質問と、やりがちな答え方・こう答える
- IT職の面接で追加で聞かれること
- 答えたくない質問をされたときの返し方
結論|面接官が見ているのは「自分を分かっているか」と「困ったとき動けるか」
障害者雇用の面接官がいちばん避けたいのは、採用したあとに体調を崩して短期間で辞めてしまうことです。だからどの質問も、突きつめると次の2つを確かめています。
- 自分の得意と苦手を、他人に分かる言葉で言えるか
- 調子が崩れそうなとき、自分で対処するか、誰かに相談できるか
優秀さを示す必要はありません。自分の扱い方を知っていると伝われば、面接官の心配はほとんど消えます。
障害のことは、業務に影響するかどうかで話す範囲を決める
まず前提を1つ。障害者雇用枠に応募する時点で、障害者手帳を持っていることは会社に伝わっています。法定雇用率に数えるには手帳が要るので、枠での応募には原則として提示を求められます。つまり「障害があることを隠すかどうか」はもう論点ではありません。
残るのは、その中身をどこまで話すかです。線はここで引きます。
面接で自分から話すこと
- どの作業で、どういうつまずき方をするか(現象)
- それに対して自分がしている工夫
- 会社に何があれば働けるか(配慮の依頼)
- 通院や服薬で、勤務時間に影響が出る部分
面接で話さなくてよいこと
- 診断名の細かい経緯や、いつどこで診断を受けたか
- 薬の種類や量
- 家族の職業や病歴、家庭の事情
- 障害と関係のない過去の通院歴
この線が引けると、冒頭の「どこまで話せばいいか」は消えます。業務に影響するなら話す。しないなら話さなくてよい。それだけです。
答えたくない質問をされたときの返し方
厚生労働省は、採用選考で適性と能力に関係のない事項を尋ねないよう事業主に求めています。具体的には、本籍や出生地、家族の職業や収入といった本人に責任のない事項と、思想信条や宗教、購読している新聞といった本来自由であるべき事項です。障害者雇用枠でも同じです。
とはいえ、その場で「それは答えられません」と言うのは負担が大きいはずです。聞かれた質問を、業務の話に置き換えて返すと角が立ちません。「ご家族はどんなお仕事ですか」には「家庭のことで勤務に影響が出ることはありません。勤務時間についてご心配があれば、そちらをお伝えします」のように返せます。
答えを避けたことで不利になるのが心配なときは、ハローワークの障害者雇用担当や、就労移行支援の支援員に面接後に相談してください。選考の進め方そのものに問題があれば、労働局に相談する道もあります。
障害者雇用枠と一般枠のどちらで応募するか、開示の範囲をどう決めるかは次の記事で整理しています。

障害者雇用の面接で必ず聞かれる5つの質問と、答え方
順番も言い回しも会社によって変わりますが、聞かれる中身はこの5つに集まります。それぞれ、面接官が知りたいこと・やりがちな答え方・こう答える、の順に並べます。
1. 「障害の特性について教えてください」
面接官が知りたいこと:診断名ではなく、その特性が業務にどう出るか。
やりがちなのは、診断名だけを答えて止まってしまうことです。「ADHDです」で終わると、面接官は何を心配すればよいか分からないまま不安だけが残ります。
こう答えます。「ADHDの特性があり、同時に複数のことを進めると抜けが出ます。そのため、依頼を受けたらその場で一覧に書き出し、上から1つずつ終わらせる進め方をしています」
現象と、自分の工夫をセットにするのがこの質問の型です。
2. 「どのような配慮が必要ですか」
面接官が知りたいこと:会社の側で用意できる範囲かどうか。
やりがちなのは、「静かな環境をお願いします」のように、会社が何をすればよいか分からない頼み方です。部屋を用意する話なのか、席を変える話なのかが伝わりません。
こう答えます。「聴覚過敏があります。耳栓かノイズキャンセリングのイヤホンを使う許可をいただければ、席はそのままで大丈夫です」
会社の負担が小さい順に、具体的な物や手順で頼むと通りやすくなります。
3. 「体調管理で気をつけていることは」
面接官が知りたいこと:自分で崩れる前に気づき、動けるか。
やりがちなのは、「体調管理には気をつけています」という言い方です。何をしているかが無いので、答えになっていません。
こう答えます。「睡眠を7時間確保しています。肩に力が入りっぱなしになったら疲れのサインなので、その日は残業せずに帰ります。数日続くときは早めに上長へ相談します」
崩れる前のサインを1つ挙げると、自己管理ができていることが具体的に伝わります。
4. 「前の職場を辞めた理由を教えてください」
面接官が知りたいこと:同じ理由でまた辞めないか。
やりがちなのは、前の職場の批判で終わることです。事実であっても、面接官には「うちでも同じことを言うのでは」と聞こえます。
こう答えます。「前職では電話の一次対応と事務処理が同時に来る配置で、抜けが増えて体調を崩しました。一つずつ進められる仕事のほうが力を出せると分かったので、データ入力を中心とした御社の業務であれば長く続けられると考えています」
環境が合わなかったという事実と、今回は合っている理由を並べて言います。
5. 「何か質問はありますか」
面接官が知りたいこと:働く場面をどこまで想像できているか。
やりがちなのは、「特にありません」と答えることです。調べていないか、働く姿を思い描けていないと受け取られます。
こう答えます。「同じような特性のある方が、どんな配慮を受けて働いていらっしゃいますか」「入社後に配慮の内容を見直す機会はありますか」
配慮は入社時に決めて終わりではありません。見直しの機会を聞いておくと、入ってから困ったときに動きやすくなります。
IT職の面接では、ここが追加で聞かれる
事務や軽作業の求人と違い、IT・Web系の障害者雇用枠では作れるかどうかを直接確かめられます。次の3つは準備しておいてください。
作ったものを見せられるか
未経験からの応募でも、Webページや簡単なアプリ、自動化した表計算のファイルなど、手を動かした結果があると話が早く進みます。大事なのは完成度よりも、何のために作り、どこでつまずき、どう直したかを説明できることです。そこに自己理解が表れるので、1つ目の質問への答えにもなります。
スキルテストや実技があるか
タイピング速度、表計算の操作、簡単なコードの読み書きを見る会社があります。時間を計られると焦って力が出せない場合は、応募の段階で「実技はありますか」と聞いておくと準備ができます。時間の延長が必要なら、それも配慮として頼めます。
在宅勤務が使えるか、いつから使えるか
通勤の負担が大きい方には重要な条件ですが、「在宅可」と書いてあっても入社直後は出社という会社が多くあります。「在宅はいつから使えますか」「週に何日まで使えますか」を面接で確かめてください。入ってから聞くと、条件が違っていても動けません。
応募先が特例子会社かどうかで、配慮の通り方が変わる
特例子会社は、障害のある社員が働くことを前提に作られた会社です。設備や配慮の仕組みが最初から用意されているぶん、配慮の依頼は通りやすくなります。一方、担当する業務の幅は親会社の一般枠より狭くなることがあります。面接では「この職種で、どこまで仕事の幅が広がりますか」と聞いておくと、入ってからの見通しが立ちます。

未経験から障害者雇用枠でIT職を目指す流れは、次の記事にまとめています。

運営側の視点配慮の内容は、面接の場だけで決まるわけではありません。内定のあとに、会社と本人で改めてすり合わせる時間を取る会社が多くあります。面接で全部を言い切れなくても、あとから足せます。その場で思いつかなかった配慮は、内定後の面談で出してください。
面接で落ちやすい3つの答え方
スキルがあっても、次の3つに当てはまると「長く続かないかもしれない」と受け取られます。
- 前の職場のせいだけで話を終える。事実であっても、次の職場でも同じことが起きると聞こえます
- できないことを隠す。入ってから困るのは本人なので、「これは苦手です」と言えるほうが信頼されます
- 自分の見立てと周りの見立てがずれている。「何でもできます」と「何もできません」は、どちらも一人で決めた評価です
3つ目は自分では気づきにくいので、書き出した答えを家族や支援員に読んでもらうと早く直せます。就労移行支援に通っている方は、模擬面接を頼めます。
まとめ|障害者雇用の面接は、準備した人から通る
面接は審査ではなく、お互いの条件が合うかを確かめる場です。合わないと分かることにも意味があります。準備は次の順で進めてください。
診断名ではなく、どの作業でどうつまずくかを仕事の言葉で3つ書きます。それぞれに、自分がしている工夫を1つ添えます。これが1つ目の質問の答えになります。
「静かな環境」ではなく「耳栓の使用許可」のように、会社が何をすればよいかが分かる形に書き換えます。負担の小さいものから順に3つ並べておくと、面接で選んで出せます。
書いた答えを声に出して読み、家族か支援員に聞いてもらいます。自分の見立てと周りの見立てのずれは、読んでもらわないと分かりません。就労移行支援では模擬面接を頼めます。
模擬面接や応募書類の添削まで一緒にやってくれる事業所は、同じ基準で比べて選べます。


面接対策まで一緒にやってくれる事業所を探すなら
障害者雇用の面接に関するよくある質問
- 服装はスーツですか?
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スーツか、清潔感のあるオフィスカジュアルが基本です。迷ったらスーツにしておくと外しません。感覚過敏でネクタイやジャケットがつらい場合は、応募のときに「服装の指定はありますか」と聞いておくと当日困りません。
- 障害者手帳は面接に持っていきますか?
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持っていってください。障害者雇用枠は手帳を前提とした採用なので、面接や書類の段階で確認されることがあります。申請中で手元に無い場合は、その旨と交付見込みの時期を先に伝えておくと話が進みます。
- 圧迫面接はありますか?
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障害者雇用で圧迫面接が行われることはまれです。むしろ体調や配慮について丁寧に聞かれることのほうが多くなります。高圧的な態度を取られた場合は、入社後の配慮も期待しにくいので、こちらから辞退するのも判断のうちです。
- 配慮をたくさん頼むと落ちますか?
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数の問題ではなく、会社が用意できる形になっているかどうかです。「耳栓の使用許可」のように負担の小さいものは通りやすく、「専用の個室」のように費用がかかるものは難しくなります。優先順位をつけて、いちばん効くものから伝えてください。
- 合否の連絡はどれくらいで来ますか?
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3日から1週間程度が多いのですが、社内で配慮の内容を検討する時間が要るため2週間ほどかかることもあります。1週間を過ぎて不安なときは、応募した窓口に問い合わせて構いません。
参考にした公的資料
- 厚生労働省「公正な採用選考をめざして|採用選考時に配慮すべき事項」(本人に責任のない事項・本来自由であるべき事項は尋ねない) https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html (2026年9月7日確認)
- 厚生労働省「障害者雇用対策」(法定雇用率と事業主の義務) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/index.html (2026年8月21日確認)
※ この記事は、就労移行支援の運営に5年以上携わった経験と、各事業所・公的機関が公表している情報をもとに作成しています。評価基準や情報の扱い方は運営者情報・編集方針で公開しています。
※ 本記事は特性の理解と働き方の工夫を扱うものであり、医学的な診断・治療の助言を行うものではありません。心身の不調が続く場合は医療機関にご相談ください。
※ 採用の進め方や配慮の内容は会社によって異なります。選考の進め方に不安があるときは、ハローワークの障害者雇用担当または各都道府県の労働局にご相談ください。









