「30代になってから発達障害の診断を受けた。未経験から新しい仕事に就けるだろうか」
「職歴がボロボロのまま40代目前。もう手遅れではないか」
20代の頃は「若さ」だけで採用されたかもしれません。しかし、30代以降の転職市場は一変します。
ただし、障害者雇用で30代が採られていないわけではありません。実際の数字を先に見てください。
ただし、応募できる求人の幅は、いま何を示せるかで変わります。示せるものが無いまま応募すると、募集の多い職種(サービス職や事務補助)に選択肢が寄ります。それが悪い仕事だという話ではなく、「ほかの選択肢を持ちにくくなる」という意味です。
示せるものを作れば、応募できる求人は変わります。
本記事では、30代以上の障害者雇用が厳しくなる構造的な理由と、そこから「ITスキル」を身につけて正社員採用を目指すための現実的な方法について解説します。
- 30代未経験の障害者雇用が厳しいと言われる3つの現実
- 30代からの再就職にITスキルが有効な理由
- スキルを身につける4つのルートの比較
結論|30代は手遅れではない。ただし20代より枠が狭いのは事実
先に結論です。雇用されている発達障害のある方のうち、30歳以上は約半数です。「30代だから採られない」は事実と違います。ただし20〜24歳がいちばん多いのも事実で、育てる前提の枠は若い層に寄っています。
だから30代でやることは「若く見せる」ことではなく、いま何ができるかを形にして示すことになります。
雇用されている発達障害のある方は、30歳以上が約半数
厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査から、発達障害のある方の年齢階級別の割合です(2026年9月8日確認)。
| 年齢 | 割合 |
|---|---|
| 19歳以下 | 1.2% |
| 20〜24歳 | 23.1% |
| 25〜29歳 | 21.4% |
| 30〜34歳 | 16.7% |
| 35〜39歳 | 8.4% |
| 40〜44歳 | 3.9% |
| 45〜49歳 | 6.4% |
| 50〜54歳 | 12.9% |
| 55〜59歳 | 1.6% |
| 60〜64歳 | 1.4% |
| 65歳以上 | 0.6% |
30〜34歳が16.7%、35〜39歳が8.4%。30歳以上をすべて足すと約52%になります(合計は当サイトで算出)。同じ調査には「常用労働者と比較すると34歳以下の層で割合が高い」とも書かれているので、若い層に偏っているのは確かです。それでも半数は30歳以上という数字が出ています。
平均勤続年数は5年1月です。入ってすぐ辞めているわけではなく、続いている方がいるということです。
採用の枠そのものは増えています
民間企業の法定雇用率は2024年4月に2.5%へ、2026年7月には2.7%へ引き上げられました。障害者を雇う義務のある企業の範囲も、従業員37.5人以上に広がっています。枠が増えたぶん、どの職種で入るかを選ぶ余地も出てきます。
【現実】「30代未経験」の障害者雇用が厳しい3つの理由
なぜ、企業は30代未経験を敬遠するのか。採用担当者の本音を知っておきましょう。これを理解せずに応募しても、不採用通知が続くだけです。
1. 「ポテンシャル採用」が終わっている
20代なら「今はできなくても、育てれば伸びる」と期待されます。
30代で見られるのは「いま何ができるか」です。育てる前提の枠が20代に比べて少ないのは確かで、雇用されている発達障害のある方の年齢を見ても20〜24歳が23.1%といちばん多くなっています。ただし30代がいないわけではありません。次で数字を出します。
2. 年下の上司が扱いづらい
未経験で入社すると、教える側が年下になることがあります。
採用側が気にするのは、指示を出しにくくならないかという点です。これは面接で先に打ち消せます。「教わる側として動きます」「分からないことは聞きます」と具体的に言えるかどうかで、印象が変わります。
3. 「単純作業」しか残っていない
示せるものが無いと、募集の多い職種に応募先が寄ります。厚生労働省の調査では、発達障害のある方の職業はサービスの職業が27.1%、事務的職業が22.7%、運搬・清掃・包装等の職業が12.5%を占め、専門的・技術的職業は5.8%です。
発達障害のある方の1か月の平均賃金は13万円、週30時間以上で働く方に絞っても15万5千円です。この平均から離れるには、5.8%の側の職種を狙うことになります。
なぜ30代からの再就職に「ITスキル」が有効なのか
事務職や軽作業ではなく、IT・Webのスキルを勧めるのには理由があります。発達障害(ASD・ADHD)のある方にとって、この分野は年齢より先に見てもらえるものが作れるからです。
もう1つあります。ASDの方は仕様が決まった作業で正確さが評価に変わり、ADHDの方は手順の無駄に気づける力が自動化の題材になります。事務補助では「速さ」と「臨機応変さ」で測られやすいのに対し、IT・Webでは作ったものそのもので測られます。測られる軸が変わると、同じ人でも結果が変わります。
「年齢」ではなく「成果物」で評価されるから
事務職の面接では「年齢」や「職歴の空白」を見られますが、ITエンジニアやWebデザイナーの世界では「ポートフォリオ(制作実績)」が重視されます。
「これを作りました」と実物を見せられるかどうかが、書類の通り方を変えます。作ったページ、動かせる自動化、まとめたレポート。形が残るものであれば、年齢の欄より先に見てもらえます。

技術の世界は、年齢によるハンデを実力でカバーしやすいのです。
「社会人経験」×「技術」が評価される
実は、企業は「技術はあるが、ビジネスマナーがない20代」に手を焼いています。
あなたには、これまでの人生で培った「敬語」「報告連絡相談」「失敗から立ち直る経験」があるはずです。
「大人な対応ができて(社会性)、かつコードも書ける(技術)」。
この組み合わせこそが、30代未経験が市場で評価されるためのポイントです。
生成AIで「作れる」までは速くなった。差がつくのは説明できるか
生成AIが下書きを書くようになって、未経験から「動くもの」までの距離は短くなりました。エラーの文面を貼れば直し方が返ってきますし、人に聞くのが負担な方でも手が止まりにくくなっています。
そのぶん、面接で見られる場所が移りました。作ったものを見せたときに聞かれるのは「なぜその作りにしたのか」です。ここで答えられないと、AIに書かせただけだと受け取られます。30代の応募でこれは効きます。作る速さでは20代と差がつきませんが、なぜそうしたかを言葉にするのは、仕事を経験してきた側が積み上げてきたものだからです。
だから、作ったものは1つでかまいません。数を並べるより、1つについて「何に困っている人向けか」「どこで詰まって、どう直したか」を説明できる状態にしてください。就労移行支援を使うなら、この説明の練習まで見てもらえるかを見学のときに確かめてください。
スキルを身につけるための「4つのルート」比較
ITスキルを学ぶ方法はいくつかありますが、30代の障害当事者にとって、どれが最適解でしょうか。「民間のプログラミングスクール」も含めてフラットに比較します。
| ルート | 費用 | 向く人 | 先に知っておくこと |
|---|---|---|---|
| 独学 | 教材代のみ | 自分のペースで進められる | エラーで止まったときに聞ける相手がいない。就職活動の支援も無い |
| プログラミングスクール | 有料(金額は各社の公表を確認) | カリキュラムが組まれていて、質問できる | 障害への配慮は前提になっていない。働きながらでも使える点は利点 |
| 職業訓練(ハロートレーニング) | 受講料は原則無料 | 期間が3か月からと短い。要件を満たせば職業訓練受講給付金の対象 | 決められた期間でカリキュラムをこなすので進みが速い |
| 就労移行支援 | 前年の世帯収入で決まる(非課税世帯は0円) | 通所日数を体調に合わせて相談できる。就職後の定着支援がある | 通所中の給料や工賃は出ない。標準利用期間は2年 |
なぜ「就労移行支援」なのか?
30代の再挑戦において、「二度目の挫折」は致命傷になります。
職業訓練校は「ついてこれない人は置いていく」スタンスですが、就労移行支援は「福祉サービス」であるため、メンタルケアや体調管理と並行してスキル習得ができます。
遠回りに見えても、確実にスキルを身につけられる環境を選ぶべきです。

30代で診断を受けた方が、先に決めておくこと
30代になってから発達障害(ASD・ADHD)の診断を受けた方は、スキルより先に決めることが2つあります。
障害者雇用枠を使うなら、障害者手帳の申請を先に始める
障害者雇用枠に応募するには障害者手帳が必要です。精神障害者保健福祉手帳は初診日から6か月を過ぎた診断書で申請するので、診断を受けたばかりならまだ申請できない期間があります。学び始めるのと同時に、申請の時期を主治医に確認しておいてください。手帳を取っても一般枠に応募できるので、取ること自体で選択肢は減りません。
障害者雇用枠で応募するか、一般枠にするかを決める
30代で診断を受けた方は、それまで一般枠(クローズ)で働いてきたことが多くなります。障害者雇用枠に移るかどうかは、この記事で扱うスキルの話とは別に決めることです。判断は「配慮を頼まずに続けられたか」で分かれます。前の職場で続かなかった理由が業務量や指示の出し方にあるなら、配慮を頼める枠のほうが持ちます。
障害者手帳を取っても一般枠に応募できるので、決めきれないうちは申請だけ先に進めておくと選択肢が減りません。どこまで会社に伝えるかは、応募先が決まってから支援員と詰められます。
前の職場で手が止まった作業を、面接で言える形にしておく
30代で来る方の多くは、すでに何度か働いた経験があります。そこで何が起きたかを、業務に直結する言い方に置き換えておくと、面接でそのまま使えます。
- ASDの例:「急な予定変更で作業が止まるので、変更はチャットで残してもらえると確実です」
- ADHDの例:「口頭で複数の依頼が重なると抜けるので、文章でもらえると助かります」
これは合理的配慮として頼めるもので、事業主には配慮を提供する義務があります。「またダメかもしれない」を減らせるかどうかは、スキルよりこの言い方を持っているかで決まります。
運営側の視点30代で来る方が見学で聞くべきなのは、年齢層ではありません。「30代の方は、どんな職種に決まっていますか」です。同じ事業所でも、20代は開発職、30代は事務補助という分かれ方をしていることがあります。人数ではなく、決まった職種を聞いてください。
30代からの再出発に強いIT特化事業所
「若い人ばかりで浮くのではないか」という不安はよく聞きます。ただ、見るべきは年齢層よりASD・ADHDの特性に合わせて課題の切り方を変えられるかです。30代で来る方は、前の職場で止まった場面をすでに持っています。それを支援員と一緒に配慮の言い方へ直せる事業所を選んでください。
自分に何が向くかから相談したいなら|Kaien(カイエン)


模擬職場の形で実務を進める訓練が中心で、職場のルールを言葉にして説明することに定評があります。IT・Webのほか、経理や人事などの事務も扱うので、「ITだけに絞りきれない」段階から相談できます。
作ったものを見せて応募したいなら|atGPジョブトレIT・Web


Web制作を実践的に学びます。デジタルハリウッドと提携した教材があり、完成したページという形で成果物が残ります。拠点は東京と大阪です。Webデザインと動画編集の実態は、別の記事にまとめています。
何から始めるか決まっていないなら|就労移行ITスクール


プログラミングとWebデザインを基礎から段階的に学べます。扱う範囲が広いので、どの分野に進むかを決めきれていない段階でも入れます。資格の取得を目標に据えることもできます。就労移行ITスクールの評判と学べる内容は、別の記事にまとめています。


「即転職」と「スキル習得」の判断基準は、こちらで整理しています。


ここまで挙げた事業所は、どれも公式情報で確認できる範囲の違いです。
1社だけ見て決めず、2〜3社を見学・体験して比べてください。パンフレットや口コミでは分からず、実際に足を運んで初めて分かるのは次の3点です。
- 支援員との相性(毎日顔を合わせる相手が、自分に合う話し方をするか)
- 学習内容(カリキュラム名ではなく、実際に何を作り、どう就職につなげるのか)
- 通い続けられるか(通所ルートの負担、教室の音や人数、自分の体調との相性)
見学や相談は無料で、かかる費用は交通費くらいです(体験利用の扱いは事業所や自治体によって異なるため、申し込み時に確認してください)。
「見学に行ったら、断りづらくなるのでは」と身構えてしまうかもしれません。でも実際のところ、見学に来た方のうち通所まで進むのは半分以下です(事業所によって差はあります)。
「学習内容が思っていたものと違った」「難しくてついていけなそうだった」「毎日通うのはしんどそうだった」——見送る理由は人それぞれで、断られるのは事業所にとって日常です。気を遣う必要はありません。合わないと感じたら、そのまま帰って別の事業所を見に行けば大丈夫です。
まとめ|生活費が持つ間に、示せるものを1つ作ってから応募する
示せるものが無いまま応募を続けると、書類で止まる回数が増えます。
しかし、正しいスキルを持ち、大人の社会性を身につければ、これまでの苦労を「経験」として活かすことができます。
いま応募して決まる仕事で進むのか。
それとも半年から1年かけて、示せるものを作ってから応募するのか。どちらが正しいという話ではなく、生活費があとどれくらい持つかで決まります。
まずは就労移行支援の見学に行き、「30代未経験からの就職実績」を具体的に聞いてみてください。
30代からの再出発は、スキルの習得環境選びから始まります。
30代・未経験からの障害者雇用に関するFAQ
- 30代職歴なし(ニート)ですが、本当に正社員になれますか?
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簡単ではありませんが、可能です。障害者雇用枠では、過去の職歴よりも「現在のスキル」と「安定して出勤できるか」が重視されます。就労移行支援に通いきり、資格などの成果を出せれば、過去の空白を埋めることは十分に可能です。
- 30代からプログラミングを始めて、20代に勝てますか?
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技術力だけで勝つのは難しいですが、総合力で勝負できます。企業が30代に求めているのは「技術力+安定したコミュニケーション能力」です。20代にはない「社会人としての落ち着き」や「業務知識」をITスキルと組み合わせることで、採用担当者に安心感を与えることができます。
- 職業訓練校(ハロートレーニング)ではダメですか?
-
ダメではありませんが、リスクが高いです。職業訓練は「就職させること」が最優先で、個別の障害特性への配慮は手薄です。授業のスピードについていけずメンタルダウンし、自信を喪失してしまうケースが多いため、体力や精神面に不安がある場合は、福祉サービスである就労移行支援を推奨します。
参考にした公的資料
- 厚生労働省「令和5年度 障害者雇用実態調査」(発達障害のある方の年齢階級別の割合、平均賃金13万円、平均勤続年数5年1月、専門的・技術的職業は5.8%) https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001233721.pdf (2026年9月8日確認)
- 厚生労働省「障害者の法定雇用率引き上げ」(2024年4月に2.5%、2026年7月に2.7%。対象は従業員37.5人以上) https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf (2026年9月8日確認)
- 厚生労働省「求職者支援制度に関するよくあるご質問」(職業訓練受講給付金の対象は求職者支援訓練または公共職業訓練の受講中) https://www.mhlw.go.jp/content/000960250.pdf (2026年9月8日確認)
※ この記事は、就労移行支援の運営に5年以上携わった経験と、各事業所・公的機関が公表している情報をもとに作成しています。評価基準や情報の扱い方は運営者情報・編集方針で公開しています。
※ 本記事は特性の理解と働き方の工夫を扱うものであり、医学的な診断・治療の助言を行うものではありません。心身の不調が続く場合は医療機関にご相談ください。
※ 就労移行支援の利用条件・自己負担額・在宅訓練の可否は、お住まいの自治体の判断によって異なります。最新の条件は自治体の障害福祉窓口または各事業所にご確認ください。









