「電話を受けながらメモを取ろうとすると、頭が真っ白になる」「料理の手順が分からなくなり、鍋を焦がしてしまう」。発達障害(ADHD・ASD)のある人にとって、同時に2つ以上のことを進めるのは、努力で埋まる差ではありません。
原因は、頭の中で情報を一時的に置いておける量(ワーキングメモリ)と、別のことへ切り替えるときに使う体力にあります。無理にこなそうとするほどミスが増え、自信が削られていきます。
この記事では、マルチタスクが苦手になる理由から、パニックになったときにその場でやること、仕事と家でのやり方の変え方、厚生労働省の事例集に載っている「職場に頼めること」、そして同時進行の少ない仕事の探し方までを順番に書きます。
- マルチタスクが苦手なのは、ワーキングメモリと切り替えの負担が理由
- 「マルチタスクが苦手」は診断名ではなく、ASDが得意に見えるのは割り込みが無いとき
- 頭が真っ白になったとき、その場でやる4つの手順
- 厚生労働省の事例集にある「指示を一つずつ出す」を、職場にどう頼むか
- 同時進行が少ない仕事の条件と、実際の職種
結論|マルチタスクは練習で増やさない。同時に来る数を減らす
マルチタスクの訓練はしなくて構いません。ワーキングメモリの量は、大人になってから練習で大きく増えるものではないからです。効くのは、入ってくる数のほうを減らすことです。この記事の中身を先に4つ出します。
| よくある困りごと | やめること | 代わりにすること |
|---|---|---|
| 電話しながらメモ | 聞きながら書く | 「メモを取ります」と言って保留にする。口頭の指示はメールかチャットに変えてもらう |
| 仕事が何度も中断する | 複数の画面を開いたまま進める | 使わないアプリを閉じる。机の上も、いま使う書類だけにする |
| 何から手をつけるか決まらない | 重要度と緊急度の2軸で考える | その日の軸を1つに決める(締切だけ/短く終わる順だけ) |
| 覚えておくことが多い | 頭の中で覚えておく | 全部書き出して、見る場所を1か所にする |
どれも自分ひとりでできますが、職場に頼んだほうが早いものもあります。「口頭ではなく文字で指示してほしい」「電話を受けている間は入力を止めたい」は、合理的配慮として相談できる内容です。思いつきの要望ではなく、厚生労働省が公表している事例集に載っている内容なので、根拠を示して頼めます。
障害を開示して働く(オープン就労)か、伏せて働く(クローズ就労)かで言い方は変わりますが、「ミスを減らすため」と理由を添えれば、どちらでも頼めます。障害者雇用枠のほうが通りやすいのは確かです。
なぜ発達障害はマルチタスクができないのか|ワーキングメモリと切り替えの負担
「要領が悪い」のではありません。頭の中で情報を置いておける量と、切り替えに使う体力の問題です。
一度に置いておける情報の量(ワーキングメモリ)が少ない
脳には、情報を一時的に置いて処理する「ワーキングメモリ」という働きがあります。机の上の作業スペースに例えられることが多く、発達障害(特にADHD)のある人は、このスペースが狭い傾向があります。定型発達の人が3つ広げられるとしたら、1つ広げた時点で他が落ちる状態です。
電話(耳から入る情報)と入力(目から入る情報)が同時に来ると、置ける量を超えて処理が止まります。これが「頭が真っ白になる」の中身です。
ASDは、別のことに切り替えるだけで疲れる
ASDのある人は、1つのことに集中する力が高い一方、AからBへ注意を移すときに多くの体力を使います。「メールを打って、電話に出て、またメールに戻る」という動きだけで疲れ、ミスが出やすくなります。
1日の終わりにぐったりしているのに、やった仕事の量は多くない。この感覚は、切り替えそのものに体力を使っているために起きます。
ADHDとASDでは、マルチタスクが苦手になる理由が違う
同じ「マルチタスクが苦手」でも、起きていることは違います。自分がどちらに近いかで、効く手が変わります。
| 比べること | ADHDに多い | ASDに多い |
|---|---|---|
| 止まり方 | 別のことに気が逸れて、どれも終わらない | 切り替えができず、その場で固まる |
| きっかけ | 通知・話し声・目に入ったもの | 急な予定変更・割り込み |
| 効きやすい手 | 目に入るものと通知を減らす | 予定を先に知らせてもらう |
ADHDとASDの両方の診断を受けている人もいます。その場合は両方の手を使って構いません。
マルチタスクができないのは病気?「ASDは得意」という話は本当?
検索していると「マルチタスクができないのは病気なのか」「ASDはむしろマルチタスクが得意だ」という、逆向きの情報が両方出てきます。どちらも半分だけ正しいので、分けて書きます。
「マルチタスクが苦手」は診断名ではない
マルチタスクが苦手なこと自体に、病名は付きません。診断名になるのは、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などのほうで、マルチタスクの苦手さはその特性の現れ方の1つです。厚生労働省も、発達障害を「生まれつきの脳の働き方の違いによるもの」として説明しています。
受診を考える目安
- 子どものころから同じ困りごとが続いている
- この記事にあるような工夫をしても、仕事や生活に支障が残る
- 眠れない、気分が落ちるなど、体調のほうにも出ている
診断が付くかどうかは医師が判断します。ただし、就労移行支援は障害者手帳がなくても使えます。医師の診断書と自治体の判断があれば利用できるので、「診断が出ていないから相談できない」ということはありません。
ASDのマルチタスクが得意に見えるのは、割り込みが無いとき
「ASDはマルチタスクが得意」という話が出るのは、次の2つの場面が混ざっているためです。
- 過集中で、まとまった量を一気に片づけられるとき
- 手順が決まっていて、途中で予定が変わらない仕事を並行して進めるとき(機械を回しながら記録を取る、など)
どちらも共通しているのは、途中で人から声をかけられないことです。つまり分かれ目は「得意か苦手か」ではなく、割り込みが入るかどうかです。仕事を選ぶときは、同時進行の数より割り込みの回数を見てください。
過集中で一気に片づけたあと、翌日に動けなくなるタイプの方は、こちらもあわせて読んでください。

マルチタスクでパニックになったとき、その場でやる4つの手順
頭が真っ白になるのは、発達障害の特性としてよくある止まり方です。ASDのある人は固まって動けなくなり、ADHDのある人は焦って手当たり次第に手をつけがちです。どちらにしても、その場で原因を考えたり優先順位を付け直したりするのは無理なので、考えなくてよい順番を先に決めておいて、そのとおりに動いてください。
パソコンの画面も、机の上も、いま触っているもの以外は閉じるかしまいます。判断せずに機械的に閉じてください。目に入る数が減るだけで、頭の中の詰まりが少し緩みます。
順番は考えず、思いつく順に書き出します。頭の中に置いたままだと、何度も思い出すことに容量を取られます。書いた時点で「忘れないようにする仕事」が終わります。
飲み物を取りに行く、トイレに行くなど、理由の要らない形で離れます。厚生労働省の事例集にも、疲れやすい人に対して休憩を多めに取ってもらう、時間をずらして取ってもらうといった配慮の例が載っています。席を外すのは甘えではありません。
全部の順番を決めようとすると、また止まります。決めるのは1つ目だけです。締切がいちばん近いもの、あるいは5分で終わるものを選んで、それが終わってから次を決めます。
週に何度も起きているなら、自分のやり方ではなく職場の進め方の問題です。障害を開示していれば合理的配慮として頼めますし、伏せていても業務の相談として頼めます。「職場に頼めること」の章を読んでください。
マルチタスクをシングルタスクに変える|仕事と家でやること
ワーキングメモリを広げるのは難しいので、入ってくる情報のほうを制限します。どれも許可を取らずに今日から始められます。
電話や口頭の指示で「聞きながら書く」のをやめる
いちばん負担が重いのが「聞きながら書く(打つ)」です。耳と目を同時に使うので、置ける量をすぐ超えます。
- 電話を受けるとき
- 「メモを取りますので少しお待ちください」と伝えて、通話を保留にするか、相手の話を止めてから書きます。聞き終わってから書くほうが、結果として聞き返しが減ります。
- 上司から口頭で頼まれたとき
- 「あとで確認したいので、メールかチャットで送ってもらえますか」と頼みます。目から入る情報だけになるうえ、言った言わないも防げます。
- 会議に出るとき
- その場では聞くことだけに集中し、記録は録音や自動の文字起こしに任せます。使えるツールは職場のルールを確認してください。
電話そのものがつらい場合は、対応を外してもらう相談もできます。

画面と机に出すものを1つにする
パソコンで複数のウィンドウを開いているだけで、頭の中の容量は減ります。開いている数は、そのまま「気になっていることの数」だからです。
- いま使うアプリ以外は、最小化ではなく閉じる
- メールとチャットの通知は切って、見る時刻を決める(10時・14時・16時など)
- 机の上は、いま使う書類だけにする
周りの視線や動きが気になる人は、机の周りに仕切りを置いてもらう相談もできます。厚生労働省の事例集には、視線があると集中できない人のために机の前後左右に衝立を用意した例が載っています。
覚えておくことを全部、紙かアプリに出す
「あれもやらなきゃ」と頭の中で覚えているだけで容量を使います。全部書き出して、見る場所を1か所に決めてください。「ここを見れば分かる」という置き場ができると、目の前のことだけに向かえます。
タスク管理のアプリを入れても続かない、という声はよく聞きます。多機能なものほど「どう分類するか」「どのタグを付けるか」という判断が増えるためです。並べ替えができて、今日やる分だけが見えれば足ります。

段取りが苦手で順番が決まらないときは、判断の軸を1つに減らす
マルチタスクの困りごとは「同時にできない」だけではありません。やることは分かっているのに、どれから始めるかが決まらないまま時間が過ぎる——こちらで固まる人も同じくらいいます。「段取りが苦手」と言われがちですが、実際は段取りそのものより、順番を決めることに容量を取られている状態です。
よく勧められる「重要度と緊急度で分ける」やり方は、判断の軸が2つあります。置ける量が少ない状態で2つの軸を同時に比べれば、優先順位を付けること自体がマルチタスクになります。決められないのは当然です。
軸を1つに落とすと動けるようになります。その日の状態で、次のどれかを選んでください。
- 締切が近い順に並べる
- 迷ったらこれです。判断が「日付の大小」だけになるので、考える負担がほぼ消えます。
- 短く終わる順に片づける
- やることの数が多くて圧倒されているときに使います。数が減ると見通しが戻り、残った大きな仕事に向かいやすくなります。
- 人を待たせている順に返す
- 自分の仕事が誰かの仕事を止めているときに使います。催促や信頼の低下といった、あとで面倒になることを先に潰せます。
運営側の視点実際に使うなら、「今日はこの軸で決める」と朝のうちに1つ決めてしまうのがいちばん簡単です。軸は締切でも、短く終わる順でも構いません。大事なのは、その日の途中で軸を変えないことです。変えた瞬間に、また比べ直しが始まります。
決めた順番は紙かアプリに書き出して、視界に置いたままにしてください。頭の中に置くと、そのたびに「この順でよかったか」を考え直すことになります。外に出しておけば、順番を決めるのは1日1回で済みます。
ここで決められないことを「やる気がない」と受け取られるのが、いちばんつらいところです。実際は容量の問題なので、順番を決めること自体を人に渡すのも手です。朝に「今日はどれからやりますか」と確認する時間を作ってもらうのは、合理的配慮として頼める内容です。体調の悪い日ほど判断に容量を使うので、調子が落ちている日だけでも頼めると楽になります。
割り込みが多かった日は、翌日に疲れとして出ます。手帳やアプリに「今日は割り込みが何回あったか」だけ数字で残しておくと、体調の記録と並べたときに関係が見えます。合理的配慮を相談するときも、「集中できません」より「割り込みが1日8回あります」のほうが通ります。
仕事の途中で割り込みが入ったときは、その場で順番を組み直さないでください。「あとで見る場所」を1つだけ決めて、そこに入れておきます。組み直すのは、いま手をつけていることが一区切りついてからで間に合います。
家事・身支度・会話も、同じやり方で減らす
家で消耗すると、翌日の仕事に持ち越します。体調に波がある人ほど、家で使う容量を先に減らしておくと、通勤や通所が続きます。やり方は仕事と同じで、同時に進めるのをやめるだけです。
- 料理:「煮込みながら洗う」をやめ、「切る」を全部終えてから「焼く」に移る。乾燥機付き洗濯機やロボット掃除機は、やること自体を消せる
- 朝の身支度:「顔を洗う→着替える→鞄を持つ」と紙に書いて壁に貼り、時計を見て計算するのをやめる
- 会話:相手が話し終わってから「少し考えさせてください」と一呼吸置く。聞きながら返事を考えない


ChatGPT・Geminiでマルチタスクを減らす|議事録と下書きを任せる
生成AIは、マルチタスクの負担を直接減らせるツールです。総務省「令和7年版 情報通信白書」によると、生成AIを業務で使っている日本企業のうち、いちばん多い使い道は「メールや議事録、資料作成等の補助」で47.3%でした。プログラミングでの利用(38.9%)より多く、事務の仕事のほうが先に置き換わっています。
ここで大事なのは、生成AIが減らすのが「聞きながら書く」「思い出しながら書く」という二重の負担そのものだという点です。
| 困っていること | AIに任せること |
|---|---|
| 会議で聞きながらメモが取れない | 録音から文字起こしと要約を作らせ、自分は聞くことだけに集中する |
| 長いメールを読むと何が要件か分からない | 本文を貼って「依頼されていることを箇条書きで」と指示する |
| メールの文面を考えるのに時間がかかる | 要点だけ渡して下書きを作らせ、自分は直すだけにする |
| やることが多くて順番が決まらない | 全部書き出して渡し、「締切が近い順に並べて」と軸を1つ指定する |
文章と要約に強いのはChatGPT、Gemini、Claudeです。Microsoft 365やGoogle Workspaceを使っている職場なら、CopilotやGeminiが最初から入っていることもあるので、まず職場で使えるものを確認してください。
使う前に確認すること
- 会社の情報や個人情報を入れてよいか、職場のルールを先に確認する
- 出てきた文章はそのまま送らない。数字と固有名詞は必ず自分で確かめる
- 録音するときは、相手に断る
「確認する手間が増えるだけでは」と思うかもしれません。ただ、確認は目だけを使う仕事なので、聞きながら書くより負担が軽くなります。二重に使っていたものを、一重に減らすのが目的です。
職場に頼めること|厚生労働省の事例集にある「指示を一つずつ出す」
ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。厚生労働省は、企業が実際に行っている合理的配慮を集めた「合理的配慮指針事例集」を公表しています。その発達障害の章に、次の見出しがそのまま載っています。
(採用後)業務指示やスケジュールを明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行うこと。
——厚生労働省「合理的配慮指針事例集【第六版】」
つまり「一つずつ出してほしい」は、こちらのわがままではなく、国が事業主向けに示している配慮の項目そのものです。頼むときにこの一文を出せると、話が早く進みます。
事例集に載っている、実際の配慮の中身
事例集には、企業が実際にやっていることが具体的に書かれています。マルチタスクに関係するものを抜き出します。
- 仕事を一つずつ渡してもらう
- 「作業指示はできるだけ細分化し、一つの作業が終わる都度、次の作業を指示している」「一つの作業を覚えてから次の作業の指導を行う」といった例が載っています。
- 指示を出す人を1人にしてもらう
- 「作業ごとに担当者を決めて、本人が混乱しないよう、一つの作業ごとにその担当からのみ指示を出す」「入社当初は全ての連絡・指示の窓口を一本化する」例があります。複数人から同時に頼まれるのを止められます。
- 急な変更を、区切りまで待ってもらう
- 「急な作業変更は極力行わない。行う場合には、本人の作業が一区切りつくまで待つ」「予想される変化については、できるだけ事前に伝える」。割り込みで固まるASDの方に、そのまま効きます。
- その日の量と順番を、紙で渡してもらう
- 「毎日、仕事の内容を書いた紙を本人に渡す(メモできる余白つき)」「ホワイトボードにその日の予定を貼り出し、業務内容を一つずつ確認する」「担当者が1日の作業量を明確にし、調整する」例があります。
- 電話と音を切り離してもらう
- 「静かなところで作業をしてもらう、耳栓を付与する、ヘッドフォンの着用を認める、机の電話を外す」「電話対応を無しにするとともに、業務指示等を筆談で行う」例が載っています。
どれも「多くの事例があった」と書かれているものです。特別に進んだ会社だけがやっていることではありません。
ナビゲーションブックに書いて渡す
口で説明するのが苦手なら、紙にして渡す方法があります。障害者職業総合センターが作っているナビゲーションブックは、自分の特性、得意なこと、苦手なこと、職場にお願いしたい配慮を1枚にまとめて、会社や支援機関に見せるためのものです。
マルチタスクの困りごとなら、「複数の指示を同時に受けると抜けが出ます。一つずつ、文字で頂けると確実に進みます」のように、困りごとと、頼みたいことをセットで書くのがコツです。「苦手です」だけで終えると、相手が何をすればよいか分かりません。
書き方は就労移行支援でも一緒に整理してもらえます。実際、面接や入社時に何を伝えるかの練習は、就労移行支援の中心的なプログラムの1つです。
障害を開示するか伏せるかで、言い方を変える
合理的配慮を法律上の義務として求められるのは、障害を開示して働いている場合(オープン就労)です。伏せて働いている場合(クローズ就労)でも頼めますが、言い方が変わります。
| 働き方 | 頼むときの言い方 |
|---|---|
| 開示している(オープン就労) | 「特性上、同時に指示を受けると抜けが出ます。合理的配慮として、一つずつ文字でお願いできますか」 |
| 伏せている(クローズ就労) | 「聞き漏らしを防ぎたいので、指示はチャットで頂けますか。終わったら次を頂く形にさせてください」 |
クローズ就労でも、「ミスを減らすため」という理由なら業務の相談として通ります。診断名を出す必要はありません。
マルチタスクが少ない仕事の条件と職種例
ここまでの工夫を続けても合わないなら、仕事のほうを選び直す番です。同時進行を完全にゼロにはできませんが、人ではなくモノや成果物に向き合う仕事を選ぶと、割り込みと同時進行はかなり減ります。
探すときは職種名ではなく、求人票に書いてある仕事の並びを見てください。「電話対応」「来客対応」「庶務全般」が並んでいれば、名前が事務職でも割り込みの多い仕事です。障害者雇用枠の求人は業務の範囲が書かれていることが多いので、応募前に判断できます。開示して応募するなら、面接で「割り込みの頻度」を聞いても不自然になりません。
在宅勤務も選択肢に入れてください。声をかけられる回数が減るぶん、割り込みそのものが少なくなります。通勤の負担も同時に減るので、体調に波がある人には効きます。
成果物の形が決まっている制作・専門職
仕様書やマニュアルという設計図があり、それに沿って一つずつ形にしていく仕事です。
- プログラマー・コーダー
- 「ここからここまでを作る」という区切りがはっきりしています。AIが下書きのコードを書くようになったぶん、いまは書く仕事より、出てきたコードを読んで直す仕事が増えています。ズレに気づく特性が効く領域です。
- 動画編集・Webライター
- どちらも1本ずつ完成させる進め方で、途中で声をかけられることが少ない仕事です。納期さえ守れば、どの順で進めるかは自分で決められます。
ルールと数字に向き合う管理・分析職
その場の空気や感情ではなく、数字やデータ、決められた手順に沿って進める仕事です。
- 経理・データ集計
- 「数字を合わせる」というゴールが決まっています。電話対応を切り離した環境なら、集中が続きます。ExcelのほかにPower BIやRPAを扱えると、障害者雇用枠でも応募先が広がります。
- テストエンジニア・データ入力
- 手順書に沿って一つずつ確認し、記録する繰り返しの仕事です。突発的な対応が少ないのが特徴ですが、「事務」と付く求人は電話や来客が混ざりやすいので、業務の範囲を必ず確認してください。
どの仕事が合うかは、マルチタスクの得意不得意だけでは決まりません。読む・聞く・書く・手を動かすのどれが得意かでも変わります。
同時進行の少ない仕事を、未経験から目指すなら


まとめ|今日やること、職場に頼むこと、それでも合わないとき
マルチタスクができないのは、能力が低いからではありません。頭の中に一度に置いておける量が少ないことと、切り替えに体力を使うことが理由で、どちらも練習では変わりません。変えるのは、入ってくる数のほうです。
次の順番で進めてください。上から順に、相手が要らないものから並べてあります。
使っていないアプリを閉じる。通知を切って、メールを見る時刻を決める。やることを全部書き出して、見る場所を1か所にする。この3つだけで、同時に気にしていることの数が減ります。
いちばん効くのは「指示を一つずつ、文字で」です。厚生労働省の事例集に載っている項目なので、根拠を示して頼めます。まず1つだけ頼んで、通ったら次を足してください。
頼んでも変わらない職場はあります。そのときは、割り込みの少ない仕事へ移る準備を始めてください。移るまでを支えるのが就労移行支援で、障害者手帳がなくても、医師の診断書と自治体の判断があれば使えます。
シングルタスクで働ける環境は、同じ基準で比べて選べます。
いまの職場で配慮を得られないときは、障害者雇用の求人を扱う転職エージェントに相談できます
障害者手帳をお持ちの方(取得予定の方を含む)が対象の求人を紹介しているサービスです。在職中でも無料で相談できます。
発達障害とマルチタスクに関するよくある質問
- マルチタスクを鍛えるトレーニングはありますか?
-
おすすめしません。ワーキングメモリの量は大人になってから大きく増えるものではないため、苦手を克服しようとするより、やらずに済ませる工夫(ツールと環境の調整)に時間を使うほうが現実的です。
- 上司に「マルチタスクが苦手」と伝えてもいいですか?
-
伝え方によります。「苦手なのでできません」だと反感を買うことがありますが、「ミスを防ぐために、一つずつ確実に処理させてください」「電話を受けている間は入力を止めさせてください」と、仕事の質を保つための提案の形にすると受け入れられやすくなります。
- ADHDとASDで、マルチタスクの苦手さに違いはありますか?
-
止まり方が違います。ADHDは次々と別のことへ気が逸れて、どれも終わらない形になりやすく、ASDは切り替えができずにその場で固まる形になりやすいです。ただし対策はどちらも「一つずつにする」で共通しています。
- 面接で「マルチタスクは苦手です」と言うと落ちませんか?
-
苦手なことだけを伝えると不利になります。「同時に複数の指示を受けると抜けが出るので、一つずつ文字で頂けると確実に進みます」のように、困りごとと頼みたいことをセットで伝えてください。配慮の中身が具体的なほど、企業は判断しやすくなります。
- 就労移行支援で、マルチタスクの練習はできますか?
-
マルチタスクそのものを鍛える訓練ではなく、自分の苦手を整理して、職場に伝えられる形にするプログラムが中心です。模擬的な仕事の中でどこで詰まるかを確かめ、必要な配慮を言葉にして、面接で伝える練習まで進めます。事業所によって内容が違うので、見学のときに確認してください。
参考にした公的資料
- 厚生労働省「発達障害者支援施策」(発達障害の定義と支援の仕組み) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/hattatsu/index.html (2026年8月21日確認)
- 厚生労働省「合理的配慮指針事例集【第六版】」(発達障害・採用後の事例。指示を一つずつ出す/急な変更は区切りまで待つ/机の電話を外す ほか) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001679527.pdf (2026年9月3日確認)
- 障害者職業総合センター「発達障害者のワークシステム・サポートプログラム ナビゲーションブックの作成と活用」 https://www.nivr.jeed.go.jp/center/report/support13.html (2026年9月3日確認)
- 総務省「令和7年版 情報通信白書」(生成AIの業務利用。メールや議事録、資料作成等の補助 47.3%) https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd112220.html (2026年9月3日確認)
- ※ この記事は、就労移行支援の運営に5年以上携わった経験と、各事業所・公的機関が公表している情報をもとに作成しています。評価基準や情報の扱い方は運営者情報・編集方針で公開しています。
- ※ 本記事は特性の理解と働き方の工夫を扱うものであり、医学的な診断・治療の助言を行うものではありません。心身の不調が続く場合は医療機関にご相談ください。









