「就労移行支援に通いたいけれど、その間の生活費がない」 「貯金を切り崩して2年も通うなんて、精神的に耐えられない」
そう思って、スキルの習得を諦めようとしていませんか? 確かに就労移行支援では「給料」は出ませんが、国の制度を正しく組み合わせることで、毎月の生活費を受け取りながら通所することは十分に可能です。
本記事では、多くの利用者が活用している「生活費を確保するための4つの公的制度」と、アルバイトの可否について解説します。 「金がないから通えない」という不安を解消し、将来への投資を始めるための具体的な手順をお伝えします。
【前提】就労移行支援で「給料」は出ません
まず、よくある誤解を解消します。 就労継続支援A型・B型とは異なり、就労移行支援は「雇用契約」を結ばないため、原則として給料(工賃)は発生しません。
交通費に関しても、自治体によって「全額助成」「一部助成」「自己負担」と対応が分かれます。 つまり、何も対策をしなければ「収入ゼロ」の状態になります。
「お金の不安」は脳の敵である
脳科学的にも、経済的な不安(欠乏マインドセット)は、脳の「ワーキングメモリ(作業記憶)」を著しく低下させることが分かっています。 「来月の家賃どうしよう…」と考えながらプログラミングを学んでも、定着率は上がりません。学習効率を最大化するためにも、制度を使って「心の安全」を確保することは必須条件です。
生活費を確保しながら通うための4つの公的支援
「働かずに学ぶ」を実現するために、以下の制度が使えないか確認してください。
傷病手当金(最大1年6ヶ月受給)
これが最も強力な手段です。 会社を病気(うつ病や適応障害など)で休職・退職する場合、在職中に条件を満たしていれば、退職後も給与の約3分の2を最大1年6ヶ月受け取ることができます。
- メリット: 月15〜20万円程度の手取りが確保できるケースが多く、生活費の心配なく訓練に集中できます。
- 注意: 退職「前」の申請や、医師の意見書が必要です。
失業保険(基本手当)の特例活用
退職後にハローワークで手続きをして受け取る手当です。 通常は「すぐに働ける人」が対象ですが、障害や病気がある場合は「就職困難者」として給付日数が延長されたり(最大300日〜360日)、受給期間を延長して通所中に受け取れるよう調整できる場合があります。
障害年金(精神障害でも受給可能)
「身体障害じゃないと貰えない」と思っている方が多いですが、うつ病や発達障害などの精神障害でも、等級(2級・3級など)に該当すれば受給可能です。
- 金額目安: 障害基礎年金2級で月額約6.8万円(令和6年度)。これだけで生活費全ては賄えませんが、大きな足しになります。
- 物理的メリット: 働けなくても入る固定収入があることで、焦って合わない職場に就職してしまうリスクを防げます。
生活保護(セーフティネット)
貯金もなく、頼れる親族もいない場合は、生活保護を受給しながら就労移行支援に通うことが認められています。 「まずは生活を安定させてから就職を目指す」という方針は、福祉として真っ当なルートです。利用をためらう必要はありません。
就労移行支援に通いながら「バイト」はできる?
「制度が使えないから、バイトで稼ぎたい」という方もいるでしょう。 結論から言うと、「自治体の許可があれば可能」です。
- 原則: 本来は「就職に向けた訓練に集中すべき」として禁止されていることが多いです。
- 例外: 「生活費が足りないが、訓練は受けたい」という事情があり、かつ「バイトをしても訓練に支障が出ない(体力的に大丈夫)」と自治体が判断すれば、認められるケースがあります。
- 対策: 隠れてバイトをせず、必ず事業所のスタッフと役所の窓口に相談してください。
目先の「数万円」より、将来の「スキル」への投資
「手続きが面倒くさい」「今のバイトを辞めたくない」と思うかもしれません。 しかし、目先の生活費のためにA型事業所(最低賃金)や単純作業のバイトを選んでしまうと、あなたは一生「時間の切り売り」から抜け出せません。
少しの間、公的制度に頼ってでも「IT特化型就労移行支援」で専門スキルを身につければ、将来的に安定したエンジニアとして自立できる可能性が開けます。
おすすめのIT系就労移行支援(有力な選択肢)
自分の状況に合わせて、相談しやすい事業所を選びましょう。
- Neuro Dive(ニューロダイブ)
- 対象: 給付金などを活用し、腰を据えて「先端IT(AI・分析)」を極めたい方。
- atGPジョブトレIT
- 対象: Web制作スキルと共に、メンタルケアもしっかり受けたい方。
- manaby(マナビー)
- 対象: 在宅訓練で交通費などの出費を抑えつつ、自分のペースで学びたい方。
- 就労移行ITスクール
- 対象: 資格取得などで着実にスキルアップし、未経験からの就職を目指す方。
制度をフル活用して「未来」を買え
お金の不安があると、人は正しい判断ができなくなります。 しかし、日本にはセーフティネットがあります。それを恥じることなく使い倒し、1年後、2年後に「納税者」として社会に恩返しをすればいいのです。
まずは無料相談に行き、「今の貯金で通えるか」「どんな制度が使えるか」をシミュレーションしてもらうことから始めてください。
就労移行支援と生活費に関するよくある質問(FAQ)
Q. 「職業訓練受講給付金(月10万円)」は貰えますか?
A. 基本的には対象外です。この制度はハローワークの職業訓練(ハロートレーニング)向けのもので、障害福祉サービスである就労移行支援とは枠組みが異なります。「就労移行支援に行けば必ず10万円貰える」というネットの情報は誤りである場合が多いので注意してください。
Q. 傷病手当金と失業保険は同時に貰えますか?
A. 同時には貰えません。まずは「傷病手当金」を受給しきってから、働ける状態になって「失業保険」に切り替えるのが一般的な受給期間を最大化するルートです。
Q. お金の手続きは事業所がやってくれますか?
A. 申請自体は本人が行う必要がありますが、書類の書き方や「どの制度が使えるか」のアドバイスは、就労移行支援のスタッフがサポートしてくれます。一人で悩まず、無料相談で「お金の不安」を打ち明けてみてください。