「就労移行支援に通ってみたいけれど、障害者手帳を持っていない」 「まだ診断を受けたばかりで、自分が対象なのか分からない」
そう悩んで、問い合わせを躊躇していませんか? 実は、就労移行支援を利用するために「障害者手帳」は必須ではありません。
本記事では、意外と知られていない「就労移行支援の本当の利用条件」と、手帳なしで利用するための具体的な手順を解説します。 「自分は対象外だ」と諦める前に、この記事で正しいルールを確認してください。
そもそも「就労移行支援」とは?(30秒で解説)
利用条件の話をする前に、そもそもこのサービスが「どういう仕組み」なのかを簡単に理解しておきましょう。ここを理解すれば、なぜ「手帳なしでも使えるのか」が見えてきます。
国が税金で運営する「就職予備校」
就労移行支援とは、障害者総合支援法に基づく公的な福祉サービスです。 簡単に言えば、「障害や病気のある人が、一般企業への就職を目指してスキルを学ぶための学校」です。
- 運営費: 9割以上が公費(税金)で賄われています。
- 目的: あなたに「納税者(就労者)」になってもらうこと。
- だから: 「今は働けないが、将来働きたい意思がある人」なら、国は喜んで支援したいのです。手帳の有無という「形式」よりも、「働く意思と必要性」が重視されます。
就労移行支援の利用条件は「3つ」だけ
法律で定められた条件は非常にシンプルです。以下の3つ全てに当てはまる方が対象です。
- 年齢: 18歳以上、65歳未満であること。
- 意思: 一般企業への就職(または開業)を目指していること。
- 状態: 障害や難病があり、単独での就職活動が困難であること。
重要なのは「3」の証明方法
この「3. 障害がある状態」を証明するために、必ずしも「障害者手帳」は必要ありません。ここを詳しく解説します。
【最重要】「手帳なし」でも利用できるケース(医師の診断書)
ここが最大の誤解ポイントです。「手帳がないと門前払い」と思っている人が多いですが、実態は違います。
自治体が認める「3つのパスポート」
自治体から「受給者証(利用パス)」を発行してもらうための書類は、以下のいずれか1つがあればOKです。
- 障害者手帳: 最もスムーズですが、必須ではありません。
- 障害年金の証書: すでに年金を受給している場合。
- 医師の診断書・意見書:これが「裏ルート」です。
- 主治医に「就労に向けた支援が必要である」と一筆書いてもらうだけで、手帳なしでも利用が認められるケースが大半です。
- 対象: うつ病、適応障害、発達障害の「疑い(グレーゾーン)」の方も、医師が必要と判断すれば利用できます。
こんな人は利用できる?(大学生・バイト中・休職中)
基本的な条件以外に、よくある「グレーゾーンな状況」について解説します。
大学生・専門学生(在学中)
- 原則: 学業が本分なのでNG。
- 例外: 「大学が就職支援を行えない(単位は取れているが就活が全滅した等)」と自治体が判断した場合、卒業年度(4年生)の後半から利用できるケースが増えています。諦めずに相談してください。
アルバイトをしている人
- 原則: 「働けている」とみなされるためNG。
- 例外: 「今のバイトは生活費のためで、将来の就職には繋がらない」「週数時間の短時間勤務」などの場合、併用が認められることがあります。ただし、隠れてバイトをするのは絶対にNGです。
休職中の人
- 原則: 復職(元の会社に戻る)目的では使えません(リワークを使えと言われます)。
- 例外: 「復職せずに、別の会社へ転職する」という前提であれば、利用できる自治体もあります。
申請から利用開始までの4ステップ
「自分は対象になりそうだ」と思ったら、以下の手順で進めます。面倒な手続きは事業所が手伝ってくれるので安心してください。
- 見学・相談: 行きたい事業所(Neuro DiveやatGPなど)を見に行き、「利用したい」と伝える。
- 申請: お住まいの自治体の「障害福祉課」へ行き、利用申請をする。(※診断書はこのタイミングで提出)
- 認定調査: 自治体の職員と簡単な面談を行い、現状を伝える。
- 受給者証の発行: 2週間〜1ヶ月ほどでパスが届き、正式に通所開始。
手帳がなくても、未来は変えられる
「手帳がないから」という理由で、支援を受けることを諦める必要はありません。 就労移行支援は、あなたの「働きたい」という意思を応援するための場所です。
特にIT系の事業所では、手帳を持たずに「一般枠」でのエンジニア就職を目指す方も大勢います。 自分が利用できるかどうか、確実な答えを知りたい方は、まずは各事業所の無料相談で「手帳がないのですが…」と聞いてみてください。プロがあなたの自治体の傾向に合わせて、最適な進め方を教えてくれます。
H2:就労移行支援の利用条件に関するFAQ
Q. 診断書代はかかりますか?
A. はい、病院によりますが3,000円〜5,000円程度かかります(自己負担)。ただし、手帳取得の診断書よりは安価で簡易的なもので済む場合が多いです。
Q. 障害者手帳を持っていなくても、就職時は「障害者枠」を使えますか?
A. いいえ。就労移行支援の利用は手帳なしでも可能ですが、企業の障害者枠での採用には手帳が必須です。 手帳なしで通所し、スキルを身につけて「一般枠(クローズ)」や「オープン就労(配慮事項ありの一般枠)」で就職する方も多くいます。
Q. グレーゾーン(診断なし)でも使えますか?
A. 「医師の意見書」さえあれば可能です。まずは心療内科を受診し、「就労移行支援を使いたいので意見書を書いてほしい」と相談してみてください。