「障害のことをどこまで話せばいいのだろう」 「配慮を求めすぎると落とされるのではないか」
障害者雇用の面接を前にして、何をどう伝えればいいのか分からず、不安になっていませんか? 実は、障害者雇用の面接官が見ているポイントは、スキルや経歴の輝かしさではありません。 「自分の障害を正しく理解し、対策できているか(安定して働けるか)」のたった一点です。
本記事では、面接で頻出する質問の「裏の意図」と、発達障害の方が陥りがちなNG回答、そして採用担当者に安心感を与える「具体的な回答例」を解説します。
一般枠とは違う。障害者雇用の面接官が見ている「裏テーマ」
面接官が一番恐れているのは「採用した後に、体調を崩してすぐ辞めてしまうこと」です。 だからこそ、彼らはあらゆる質問を通じて、以下の2点だけを確認しようとしています。
- 自己理解: 自分の得意・不得意を客観的に把握しているか。
- 対処能力: トラブルが起きた時、自分で対処(または相談)できるか。
「優秀さ」をアピールする必要はありません。「自分の取扱説明書」を持っていることをアピールすれば、信頼は勝ち取れます。
【回答例付き】面接で必ず聞かれる5つの質問と対策
ここでは、頻出質問に対する「面接官の意図」と「OK回答例」を紹介します。
「あなたの障害特性について教えてください」
- 意図: 診断名を知りたいのではなく、「業務にどう影響するか」を知りたい。
- OK回答: 「ADHDの特性があり、マルチタスクの場面で抜け漏れが発生しやすい傾向があります。そのため、タスクは一つずつ完了させる工夫をしています。」
- ※診断名だけでなく、具体的な「現象」と「対策」をセットで伝えます。
「業務上、どのような配慮が必要ですか?」
- 意図: 会社側で用意できる環境かどうかの確認。
- OK回答: 「聴覚過敏があるため、可能であれば耳栓やノイズキャンセリングイヤホンの使用を許可いただけると、業務に支障なく集中できます。」
- ※「静かな部屋を用意してください」といった過大な要求ではなく、「道具の許可」など実現可能な提案をすると好印象です。
「体調管理で気をつけていることは?」
- 意図: 自分でストレスケアができ、安定して出社できるか。
- OK回答: 「睡眠時間を7時間確保することを徹底しています。また、調子が崩れそうな時は、無理をせず早めに上長へ相談するようにしています。」
「前職を辞めた理由(または空白期間)は?」
- 意図: 同じ理由で辞めないか、他責思考ではないか。
- OK回答: 「前職では電話対応と事務処理のマルチタスクにより体調を崩しました。自身の適性を再確認し、シングルタスクで集中できる御社のデータ入力業務であれば、長く貢献できると考え志望しました。」
- ※ネガティブな理由は「環境の不一致」とし、今回は「一致している」とポジティブに転換します。
「何か質問はありますか?(逆質問)」
- 意図: 働く意欲と、不安点の解消。
- OK回答: 「私と同じような障害特性を持つ方で、どのような配慮を受けて活躍されている方がいらっしゃいますか?」
- ※実際に働くイメージを持っていることが伝わります。
面接で「落ちる人」に共通する3つの特徴
スキルがあっても、以下の特徴がある人は「リスクが高い(定着しない)」と判断され、不採用になりやすいです。
- 障害を「他責」にする: 「前の職場が悪かった」「理解がなかった」と環境のせいばかりにする人。
- 「できないこと」を隠す: 入社後のミスマッチを生むため、企業が最も嫌う嘘です。「できません」と言える勇気も信頼の一つです。
- 「客観性」がない: 自分の評価と周囲の評価がズレている人。
一人での対策に限界を感じた時の「客観視」の方法
自分の障害特性を、一人で客観的に分析するのは至難の業です。主観が入ってしまうと、どうしても「言い訳」や「過度な要求」に聞こえてしまいがちだからです。
もし、うまく言語化できない場合は、第三者の視点を借りることをおすすめします。
- 医師やカウンセラーに聞く: 医学的な観点から特性を整理してもらう。
- 家族や友人に聞く: 「私ってどんな時にミスしやすい?」と聞いてみる。
- 支援機関(就労移行支援など)を使う: プロの視点で「企業に伝わる言葉」に翻訳してもらう。
重要なのは、自分一人で抱え込まず、他者の目を入れて「自己理解」の精度を高めることです。それが面接突破への一番の近道になります。
面接は「審査」ではなく「すり合わせ」の場
面接で緊張するのは、「よく見せよう」とするからです。 しかし、障害者雇用の面接は、自分を大きく見せる場所ではありません。
「私はこういう特性がありますが、こうすれば活躍できます」 という事実を、淡々と、正確に伝える「すり合わせ」の場です。
準備さえすれば、怖い場所ではありません。 まずは自分の特性を書き出し、「自分の取扱説明書」を作ることから始めてみてください。
障害者雇用の面接に関するFAQ
Q. 服装はスーツですか?
A. 基本的にはスーツ、または清潔感のあるオフィスカジュアルが必須です。第一印象で「TPO(ルール)が守れる人」と判断してもらうためです。迷ったらスーツが無難です。
Q. 圧迫面接はありますか?
A. 障害者雇用で圧迫面接が行われることは稀です。むしろ、体調や特性について丁寧にヒアリングされるケースが大半です。もし高圧的な態度を取られたら、理解のない職場である可能性が高いため、こちらから辞退するのも賢明な判断です。
Q. 合否の連絡はどれくらいで来ますか?
A. 一般的には3日〜1週間程度が多いです。ただし、社内での配慮事項の検討や調整に時間がかかる場合もあり、2週間程度かかることもあります。焦らず待ちましょう。