「新しいことに挑戦したい(ADHD)けれど、環境が変わるのは不安(ASD)」 「完璧に仕上げたい(ASD)のに、ケアレスミスをしてしまう(ADHD)」
ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)を併発している方は、自分の中に相反する特性を持ち合わせているため、「アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような疲労感」を抱えがちです。
単独の特性よりも仕事選びの難易度は高いですが、その矛盾した特性をうまくコントロールできれば、他の人にはない独自の強みを発揮できる可能性も秘めています。
本記事では、併発タイプ特有の「仕事の辛さ」の原因を整理し、両方の特性を活かせる「向いている仕事」と、就職に向けた準備方法について解説します。
ASDとADHDの併発で「仕事が辛い」と感じる理由
まずは、なぜ仕事がうまくいかないのか、そのメカニズムを理解しましょう。
1. 「完璧主義」と「不注意」の板挟み
ASDの「細部までこだわりたい」という特性と、ADHDの「不注意・衝動性」が衝突します。 頭では100点を目指しているのに、実際にはミスをしてしまう。このギャップにより、「自分はダメだ」という強い自己否定に陥りやすく、二次障害(うつ・適応障害)のリスクが高まります。
2. 人間関係の「距離感」がつかめない
ADHD的な「衝動的な発言」と、ASD的な「空気を読まない発言」が混在します。 「昨日は明るく話せたのに、今日は誰とも話したくない」といった気分のムラも激しくなりがちで、職場で「扱いにくい人」と誤解されることがあります。
ASD・ADHD併発の人に向いている仕事・職種
併発タイプが活躍するためには、「ADHDの行動力・発想力」と「ASDの専門性・集中力」の両方を活かせる(または許容される)職種を選ぶことが重要です。
1. IT・Web・クリエイティブ職
- 具体例: Webデザイナー、プログラマー、動画編集者、Webライター
- 向いている理由:
- ADHD要素: 新しい技術やトレンドへの興味(好奇心)が活きる。
- ASD要素: 細部へのこだわりや、ツール操作への没頭が品質に繋がる。
- 環境: チャットツールやフレックス制など、対人ストレスや時間の縛りを緩和できる環境が多い。
2. 研究・専門職・技術職
- 具体例: データアナリスト、研究員、品質管理、整備士
- 向いている理由:
- ASD要素: 特定分野への深い知識と探究心が評価される。
- ADHD要素: 難題に対する集中的なエネルギー(過集中)を発揮できる。
- 環境: 自分のペースで没頭できる時間が多く、マルチタスクが比較的少ない。
3. 企画・マーケティング職
- 具体例: 商品企画、広報、マーケター
- 向いている理由:
- ADHD要素: 斬新なアイデア出しや、行動力が求められる。
- ASD要素: データに基づいた分析や、論理的な戦略立てが得意。
- 環境: 変化が多く飽きにくい一方で、数値分析などの静的な業務もあるためバランスが取りやすい。
仕事を長く続けるために必要な「準備」とは
いきなり求人に応募するのは危険です。併発タイプの方が同じ失敗を繰り返さないためには、以下の3つのステップで「自分を操縦する準備」を整える必要があります。
1. 自分の「電池切れパターン」をログに残す
併発タイプ最大のリスクは、ADHDの過集中で走り続け、ASDの感覚疲労に気づかずに突然燃え尽きることです。 これを防ぐためには、日記やアプリで「活動量」と「気分の波」をモニタリング(記録)する必要があります。「この予兆が出たら休む」というルールを自分の中に作ることが、長く働くための命綱になります。
2. 「やりたいこと」より「絶対に無理な環境」を言語化する
ADHDの「やりたい!」という衝動だけで仕事を選ぶと、職場環境がASDの特性に合わず(音がうるさい、席替えが多いなど)に破綻します。 まずは「絶対に譲れないNG条件(騒音不可、電話対応不可など)」を明確にし、その条件をクリアした中から「やりたい仕事」を探すという順序を徹底してください。
3. 就労移行支援を「実験場」として使う
自分の特性分析や環境調整を、一人で行うのは困難です。 障害福祉サービスである「就労移行支援」を利用し、支援員の客観的な視点を借りながら「どの程度の負荷なら耐えられるか」「どんな配慮があれば働けるか」を実験・検証してください。 実際のオフィスに近い環境で「失敗する練習」をしておくことが、就職後の定着率を劇的に高めます。
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ASD・ADHD併発の人に合った就労移行支援の選び方
もし就労移行支援を利用する場合、併発タイプの方は以下の視点で事業所を選ぶと良いでしょう。
- 自己理解プログラムが充実しているか: スキルだけでなく、自分の特性(凸凹)を分析し、対策を立てる訓練に時間を割いているか。
- カリキュラムの幅と深さがあるか: ADHDの「飽きっぽさ」に対応できる多彩なプログラムと、ASDの「こだわり」を満たす専門的な学習の両方が用意されているか。
具体的な選び方や、自分に合う事業所の探し方については、以下の記事で詳しく解説しています。
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矛盾する特性は、使いこなせば「強力なエンジン」になる
ASDの自分とADHDの自分、どちらかを消そうとする必要はありません。 重要なのは、その時々の状況に合わせて「今はADHDモードでアイデアを出そう」「今はASDモードでミスチェックをしよう」と、自分でスイッチを切り替えられるようになることです。
そのための環境選びと自己理解さえできれば、あなたの矛盾した特性は、他の誰にも真似できない強力な武器になります。
ASD・ADHD併発の仕事に関するFAQ
Q. 障害者手帳の診断名はどうなりますか?
A. 主治医の判断によりますが、両方の診断名がつくこともあれば、主症状(生活への支障が大きい方)のみが記載されることもあります。就労移行支援や障害者雇用の利用においては、診断書にいずれかの記載があれば利用可能です。
Q. どちらの特性を優先して仕事を探すべきですか?
A. 「環境はASD、内容はADHD」という基準で選ぶのが一つの成功パターンです。 例えば、「静かでルールの明確な環境(ASD向け)」で、「変化や興味のある業務(ADHD向け)」を行うといった形です。自分が何に最もストレスを感じるか(音なのか、飽きなのか)を優先して環境を選びましょう。