休職期間に入り、少し体調が落ち着いてきた頃、医師や会社から「リワーク(復職プログラム)」を勧められて迷っていませんか?
「元の会社に戻るために頑張るべきか」
「いっそ会社を辞めて、新しいスキルを身につけるべきか」
この二択は、あなたの今後のキャリアを左右する大きな分岐点です。
本記事では、「リワーク」と「就労移行支援」の決定的な違いを比較表で整理し、今のあなたの心理状態や状況に合わせて、どちらを選ぶべきかの判断基準を解説します。
【比較表】リワークと就労移行支援の決定的な違い
名前は似ていますが、この2つは「ゴール(目的)」が全く異なります。
まずは以下の表で全体像を把握しましょう。
| 項目 | リワーク(復職支援) | 就労移行支援(転職支援) |
| ゴール | 元の職場への「復職」 | 新しい会社への「転職」 |
| 目的 | 再発防止・生活リズムの再建 | スキル習得・適職探し |
| 主な運営 | 医療機関・公的機関 | 民間企業・NPO |
| 内容 | 認知行動療法・軽作業・オフィスワーク | 専門スキル訓練(IT等)・資格取得 |
| 期間 | 3ヶ月〜6ヶ月程度 | 半年〜最大2年 |
| 費用 | 医療費(3割負担)など | 原則無料(※所得による) |
- リワーク: マイナスになった体調をゼロに戻し、元の環境に適応するためのリハビリ。
- 就労移行支援: ゼロから新しいスキル(プラス)を身につけ、環境そのものを変えるための訓練。
あなたはどっち?失敗しないための選び方
「どっちに行けばいいか分からない」という方は、現在の会社への「気持ち」と「原因」で判断してください。
リワーク(復職)を選ぶべき人
- 会社の人間関係や業務内容自体は好きだ。
- 今回の休職原因は「過重労働(残業)」や「一時的なトラブル」だった。
- 「戻れるなら戻りたい」と思っている。
- → あなたに必要なのは、ストレス対処法を学び、元の場所で生き抜く力をつけることです。
就労移行支援(転職)を選ぶべき人
- 会社の人間関係や業務内容(適性)が原因で体調を崩した。
- 復職することを考えると、動悸がしたり涙が出たりする。
- 「もう二度とあそこには戻りたくない」と思っている。
- → あなたに必要なのは、我慢して戻ることではなく、「自分に合う新しい環境(職種)」へ移動するためのスキルです。
休職期間を「ITスキル習得」に充てる第3の選択
もし「就労移行支援(転職)」のルートを選ぶなら、単なる療養期間にするのではなく、「ITスキル」を身につける期間にすることをおすすめします。
なぜ休職中の「IT学習」が有効なのか
メンタル不調からの社会復帰において、IT・Webスキルは強力な武器になります。
- 環境を選べる: リモートワークや静かなオフィスなど、メンタルに優しい環境で働きやすい。
- 対人ストレスの軽減: 電話対応や複雑な根回しが少なく、チャットや成果物ベースで評価される。
- 空白期間の正当化: 面接で「休んでいる間にプログラミングを勉強していました」と伝えることで、休職期間を「ブランク」から「研修期間」へとポジティブに変換できる。
IT特化型就労移行支援で学べること
一般的なビジネスマナーだけでなく、以下のような専門的なコースを持つ事業所が増えています。
- プログラミングコース: システム開発やアプリ制作を学ぶ。
- Webデザインコース: HP制作や画像加工ソフト(Photoshop等)を学ぶ。
- データ分析コース: AI活用や統計データを扱うスキルを学ぶ。
「ただ休む」のではなく「武器を磨く」。
そう考えるだけで、将来への不安は大きく軽減されるはずです。
ゴールは「復職」だけではない
「休職=復職しなければならない」という決まりはありません。
制度上、復職が前提となっているリワークとは違い、就労移行支援は「今の会社を辞めて、新しい道に進む」ことを前提とした場所です。
大切なのは、世間体や義理ではなく、「半年後の自分が笑って働いているイメージ」が湧く方を選ぶことです。
もし「戻るのが怖い」と感じるなら、それは逃げではなく「進路変更」のサインです。
まずは就労移行支援の資料を取り寄せたり、見学に行ったりして、「新しい選択肢」があることを肌で感じてみてください。
リワークと就労移行支援に関するFAQ
Q. 休職中でも就労移行支援は利用できますか?
A. 原則は「退職後」または「退職が決まっている状態」での利用となります。ただし、自治体によっては「復職困難であり、転職を目指すことが確実」と判断されれば、休職中の利用を認めるケースもあります。詳しくはお住まいの自治体か、事業所に相談してください。
Q. リワークと就労移行支援は併用できますか?
A. 基本的にはできません。どちらも公的な支援制度を使うため、目的(復職か転職か)を一本化する必要があります。
Q. 医療リワークと職リバリワークの違いは?
A. 医療リワークは病院が行う治療の一環で、メンタルケアが中心です。職リバリワークは地域障害者職業センターが行う公的支援で、より実践的な職業訓練に近いです。就労移行支援はこのどちらとも異なり、民間企業が運営する「転職(就職)のための訓練校」という立ち位置です。