発達障害

発達障害で仕事が続かない原因は脳の特性?対策と長く働くコツ

「新しい仕事を始めても、半年も経たずに辞めたくなってしまう」 「ミスばかりで怒られ、居づらくなって退職を繰り返している」

自分は社会不適合者なのではないか、単に根性がないだけなのではないか…そんな風に自分を責めていませんか?

実は、発達障害(ADHD/ASD)で仕事が続かない原因の多くは、あなたの性格や努力不足ではなく、「脳の特性」と「職場の環境」がミスマッチしていることにあります。

この記事では、なぜ仕事が続かないのかという根本的な原因を脳科学的な視点で解説し、今すぐできる具体的な対策と、無理なく長く働くための環境選びについて解説します。

発達障害で仕事が続かない原因とは?脳の特性による違い

まずは、自分が「なぜ辞めたくなるのか(クビになるのか)」のパターンを客観的に理解することが第一歩です。ADHDとASDでは、仕事が続かない理由の傾向が異なります。

ADHDで仕事が続かない理由:ケアレスミスと飽き

ADHDタイプの方が仕事が続かない主な原因は、「不注意によるミス」「興味の喪失」です。

  • ケアレスミス: 確認したつもりでも抜け漏れがあり、度重なる叱責で自尊心が削られ、辞めたくなってしまう。
  • 衝動性と飽き: ルーチンワークに耐えられず苦痛を感じたり、衝動的に「もう辞めます」と言ってしまったりする。

ASDで仕事が続かない理由:人間関係と環境変化

ASDタイプの方が仕事が続かない原因は、「対人関係の疲弊」「変化へのストレス」が多い傾向にあります。

  • 暗黙のルール: 「空気を読む」「適当にやる」が理解できず、職場で孤立してしまう。
  • 感覚過敏: オフィスの電話音や話し声、照明などが耐え難いストレスとなり、体調を崩して出勤できなくなる。

「仕事が続かない」を放置すると二次障害のリスクも

「自分が悪いんだ」と無理をして合わない環境で働き続けると、うつ病や適応障害などの「二次障害」を発症するリスクがあります。 こうなると、仕事どころか日常生活もままならなくなってしまいます。「続かない」こと自体よりも、心身を壊すことの方が避けるべき事態です。

仕事が続かない悩みを解消する具体的な対策と工夫

環境を変える前に、まずは現在の仕事で少しでも楽に働くための対策(セルフケア)を試してみましょう。

取扱説明書を作り周囲に配慮を求める

自分がどんな時にミスをするのか、どんな環境だと集中できないのかを言語化します。

  • 「口頭指示は忘れるので、メールかメモでお願いします」
  • 「午後は集中力が切れるので、単純作業に回します」 このように自分の特性を把握し、上司や同僚に事前に伝えておく(配慮を依頼する)だけでも、トラブルは減らせます。

デジタルツールで脳の苦手分野を外注化する

苦手なことは、自分の脳ではなくツールに任せましょう。

  • アラーム・リマインダー: ADHDの「忘れっぽさ」はスマホで管理する。
  • 生成AI(ChatGPT等): メールの返信作成や文章の要約など、言語化に時間がかかる作業をAIに任せる。
  • ノイズキャンセリング: 聴覚過敏がある場合、耳栓やイヤホンで物理的に遮断する。

対策しても仕事が続かないなら「環境選び」を見直そう

本人がどれだけ対策しても、どうしてもカバーしきれない部分はあります。その場合は、「努力不足」ではなく「環境(職種)選びのミス」である可能性が高いです。

「続かない」のは能力不足ではなくミスマッチ

魚が陸で走れないのと同じで、特性に合わない環境では誰でも無能になります。逆に、特性が活きる環境であれば、驚くほどの成果を出して長く働けるケースも多々あります。

発達障害の特性が活きる仕事・職場の条件

一般的に、以下のような条件の仕事は、発達障害のストレス要因を減らしやすく、長く続きやすいと言われています。

  1. 専門性が高い: 「何でもやる」総合職ではなく、特定のスキル(プログラミング、デザイン、分析など)で評価される仕事。
  2. 自分のペースで進められる: 電話対応や急な割り込みが少なく、成果物で評価される仕事。
  3. 環境調整がしやすい: 在宅勤務(リモートワーク)が可能、または静かな環境で働ける。

特にITエンジニアやWebクリエイターなどの専門職は、これらの条件を満たすことが多く、発達障害を持つ方にとって有力な選択肢の一つです。

仕事が続かない不安を解消する「就労移行支援」という選択

「向いている仕事は分かったけど、未経験から転職してまた失敗するのが怖い…」 そう感じる方は、いきなり求人に応募するのではなく、「就労移行支援」というワンクッションを挟むのが賢明です。

適性を見極める「お試し期間」として活用する

就労移行支援事業所では、プログラミングや事務、軽作業など、さまざまな職業訓練を体験できます。 「本当にPC作業が向いているのか?」「実は細かい作業が得意なのでは?」といった適性を、失敗が許される環境でじっくり確認できます。

定着支援で「就職後も仕事が続く」環境を作る

就労移行支援の最大のメリットは、就職した後の「定着支援」です。 働き始めてから困ったことがあっても、支援員があなたと企業の間に入って調整してくれます。「仕事が続かない」という悩みに最も効くのが、この第三者による継続的なサポートです。

発達障害で仕事が続かない悩みは環境で解決できる

仕事が続かないのは、あなたが劣っているからではありません。あなたの脳の特性と、今の環境パズルが噛み合っていないだけです。

「対策」をして、「環境」を選び直し、必要であれば「支援」を使う。 この手順を踏めば、必ずあなたらしく長く働ける場所は見つかります。

まずは、自分の特性を正しく理解するために、専門医への相談や、就労移行支援事業所の無料相談・見学に行ってみることから始めてみませんか?

発達障害と仕事が続かない悩みに関するよくある質問 (FAQ)

Q. 発達障害の診断なしでも就労移行支援は利用できますか?

A. 原則として障害者手帳が必要ですが、手帳がなくても医師の診断書や、自治体の判断(受給者証の発行)があれば利用できる場合があります。「自分は発達障害かもしれない」と悩んでいる段階でも、まずは事業所の無料相談会に参加して、利用条件について確認してみることをお勧めします。

Q. 転職回数が多く履歴書が書けませんが、就職は不利ですか?

A. 確かに一般枠では不利になることがありますが、就労移行支援を経由した障害者雇用(オープン就労)や理解のある企業への応募であれば、事情が考慮されます。支援員と一緒に「なぜ続かなかったか」「今はどう対策しているか」を整理し、ポジティブに伝える練習をすることで、採用の可能性は十分に高まります。

Q. 障害を隠して働く(クローズ)か、伝えて働く(オープン)か迷っています。

A. 「仕事が続かない」ことが最大の悩みであれば、障害を開示して配慮を得られる「オープン就労」の方が、定着率は圧倒的に高くなります。就労移行支援では、自分にとってどちらの働き方が幸せか、実習などを通じてじっくり検討することができます。

Q. 40代で仕事が続かない場合でも再就職は可能ですか?

A. 可能です。就労移行支援を利用する方の中には、30代・40代で転職を繰り返して自信を失っている方も多くいます。年齢相応の社会人経験を活かしつつ、ITなどの専門スキルを新たに身につけることで、再出発されている方は大勢いらっしゃいます。

Q. ADHDで仕事にすぐ飽きるため続かないのですが対策は?

A. 飽きっぽいのは「好奇心が強い」「新しいもの好き」という才能の裏返しでもあります。変化の激しいIT業界や、プロジェクトごとに内容が変わるWeb制作などの仕事は、ADHDの特性と相性が良い場合があります。就労移行支援でいろいろな作業を試して、夢中になれるものを探してみましょう。

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