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発達障害こそフリーランス?いきなり独立が99%失敗する理由と手順

「満員電車に乗らなくていい」 「嫌な上司と顔を合わせなくていい」 「自分の好きな時間に起きられる」

発達障害(ASD/ADHD)の特性を持つ人にとって、フリーランスという働き方は、まさに「理想郷」に見えるかもしれません。 事実、組織に馴染めず苦しんでいる人ほど、個人で稼ぐスタイルには高い適性があります。

しかし、憧れだけで「会社を辞めてフリーランスになります」と宣言するのは、丸腰で戦場に行くようなもの(自殺行為)です。

本記事では、発達障害の方がフリーランスを目指す際にぶつかる「壁」と、それを乗り越えるための「4つの学習ルート(独学・スクール・訓練校・支援)」の比較を通じて、失敗しないためのロードマップを解説します。


なぜ発達障害にフリーランスが向いているのか(適性)

まずは、あなたの脳がなぜ会社員に向かず、フリーランスに向いているのか、その「脳科学的な根拠」を知りましょう。

ADHD(注意欠如・多動症)の場合

  • 過集中を活かせる: 興味のある案件なら、食事も忘れて没頭できるため、短期間で高い成果を出せます。
  • 時間の自由: 「朝9時始業」という縛りがなく、自分の脳が覚醒している時間(夜型など)に働けます。

ASD(自閉スペクトラム症)の場合

  • 対人ストレス・ゼロ: 会議、飲み会、雑談といった「業務外のノイズ」を完全に遮断し、成果物だけで評価されます。
  • こだわりの品質: 自分の納得いくまでクオリティを追求することが、そのまま顧客からの信頼に繋がります。

未経験から独立してはいけない「3つの壁」

適性があっても、準備なしで独立すれば失敗します。フリーランスとは「自由な人」ではなく「すべての責任を負う個人社長」だからです。

  1. スキル不足の壁: 「誰でもできる仕事(ポイ活、安価なライティング)」は単価が低すぎて生活できません。専門スキル(ITなど)が必須です。
  2. 信用不足の壁: 実績のない個人に、高単価な仕事を依頼する企業はいません。
  3. 自己管理の壁: 自由すぎるがゆえに、ADHDの人は昼夜逆転し、納期を守れず信用を失うリスクがあります。

フリーランスになるための「4つの学習ルート」徹底比較

では、どうやってスキルを身につけ、独立を目指すべきか。 主要な4つのルートを、「費用」と「発達障害との相性」で比較します。

独学(本・ネット)

  • 費用: ◎ 安い(数千円〜)
  • 期間: × 無期限(挫折しやすい)
  • 発達障害との相性:× 最悪
    • 理由: 強制力がないため、ADHDは飽き、ASDは独自のやり方に固執して市場価値のないスキルを身につけてしまいがちです。フィードバックがないのが致命的です。

有料プログラミングスクール

  • 費用: × 高い(60〜80万円)
  • 期間: △ 早い(3ヶ月〜)
  • 発達障害との相性:△ リスク大
    • 理由: 「短期スパルタ」が主流です。メンタル不調がある状態で、1日10時間の学習負荷をかけると、スキル習得の前に二次障害(うつ再発)で倒れる危険があります。

公的職業訓練(ハロートレーニング)

  • 費用: ◎ 無料(テキスト代のみ)
  • 期間: 〇 標準的(3ヶ月〜6ヶ月)
  • 発達障害との相性:△ 人による
    • 理由: 無料で学べますが、環境は「学校」そのものです。
    • 集団授業で進むため、一度休むとついていけなくなります。また、講師はあくまで「授業をする人」であり、メンタルケアの専門家ではありません。「学校という環境がトラウマ」な人には不向きです。

就労移行支援(IT特化型)

  • 費用: ◎ 実質0円(※公費負担)
  • 期間: 〇 じっくり(〜2年)
  • 発達障害との相性:◎ ベスト
    • 理由: カリキュラムは個別学習(eラーニング等)が中心で、自分のペースで進められます。最大の強みは、技術指導だけでなく「生活リズムの安定」や「メンタルケア(自己管理)」がセットになっている点です。

急がば回れ。「ゴールデンルート」はこれだ

比較の結果、発達障害の方がフリーランスを目指すなら、以下の手順を踏むのが最も確実なルートとなります。

Step1:就労移行支援で「土台」を作る

職業訓練校の「スピード」よりも、就労移行支援の「安定」を選んでください。 フリーランスに最も必要なのは、スキル以上に「自分の体調を管理する能力(セルフマネジメント)」だからです。これを学べるのは就労移行支援だけです。

Step2:一度就職して「実務経験」と「貯金」を作る

ここが重要です。いきなり独立せず、「会社の金で勉強させてもらう期間」を挟みます。

  • メリット: 企業の看板で「実務実績」が作れる。フリーランスになった時の単価が倍以上になります。
  • 期間: 1年〜2年で十分です。合わなければ障害者枠(オープン)でも構いません。

Step3:副業から始めて、手応えを得てから独立する

会社員のまま、土日などで小さな案件を受け始めます。「会社に頼らなくても稼げた」という実績と自信ができたら、満を持して退職・独立します。

フリーランスを見据えて選ぶべき事業所

ゴールデンルートの第一歩(Step1)を踏み出すために、「将来の独立」を視野に入れたスキルが学べる事業所を選びましょう。

atGPジョブトレIT

  • 向いている人: Webデザイナー志望
  • 理由: Web制作(HP作成)は、フリーランス案件の中で最も数が多く、在宅でも受注しやすいジャンルです。制作会社への就職ルートも太いため、Step2(実務経験)へ進みやすいのが特徴です。

Neuro Dive(ニューロダイブ)

  • 向いている人: データ分析・AI志望
  • 理由: 高単価な専門職を目指せます。ここで高度なスキルを身につけ、大手企業で数年実績を積めば、フリーランスとして独立した際に時間単価1万円越えも夢ではありません。

manaby(マナビー)

  • 向いている人: 在宅ワーク志望
  • 理由: 独自のeラーニングシステムで、Webスキルを自分のペースで学べます。「自宅で一人で作業を進める」という環境自体が、フリーランスの予行演習になります。

焦りは禁物。まずは「稼げるスキル」を身につけよう

「会社が辛いから」という理由だけで逃げると、準備不足で失敗します。 フリーランスとして生き残るために必要なのは、勢いではなく「確実なスキル」と「実績」です。

まずは、今の生活を維持しながら、あるいは就労移行支援という安全な場所で、武器(スキル)を手に入れることから始めてください。 遠回りに見えても、それが一番確実な独立へのルートです。

フリーランスと発達障害に関するFAQ

Q. 障害者年金を貰いながらフリーランスはできますか?

A. 可能です。障害年金には所得制限がないため、フリーランスで稼いでいても受給は止まりません(※障害状態が変わったとみなされる更新時の審査を除く)。これは不安定なフリーランスにとって最強のセーフティネットになります。

Q. 確定申告が不安です。ADHDでもできますか?

A. 多くのADHDフリーランスが、会計ソフト(freeeやマネーフォワードなど)を使って乗り切っています。銀行口座と連携すれば自動で記帳してくれるため、手作業はほぼ不要です。これも「ツール」で解決できる問題です。

Q. フリーランスになれば、コミュニケーションは不要ですか?

A. ゼロにはなりません。クライアントとのチャットやミーティングは必要です。ただし、会社員のような「不毛な飲み会」や「社内政治」は一切不要です。業務に必要な最低限のやり取りだけで済みます。

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