発達障害

発達障害は勉強できる?できない?両極端な2つのタイプと、学歴に頼らない仕事の選び方

「教科書の内容が頭に入ってこない」と悩む人がいる一方で、「東大生には発達障害が多い」という噂も耳にする。 一体、発達障害は「勉強ができる」のでしょうか、それとも「できない」のでしょうか。

結論から言えば、この問いにイエスかノーで答えることはできません。 発達障害の特性は、ある条件下では「驚異的な学習能力」を発揮し、別の条件下では「極端な学習困難」を引き起こすからです。

本記事では、まず「勉強ができるタイプ」と「できないタイプ」それぞれの具体的な特徴を解説します。 その上で、客観的な調査データと照らし合わせ、学校の成績にとらわれずに社会で働き続けるための「現実的な選択肢」を提示します。

なぜ分かれる?「勉強ができるタイプ」と「できないタイプ」の特徴

同じ診断名(ASDやADHD)でも、学習への現れ方は正反対になります。ご自身やご家族はどちらの傾向に近いでしょうか。

パターンA:「勉強ができる」タイプの特徴

いわゆる「高学歴発達障害」になりやすい層です。彼らが勉強できるのは、学校のテスト形式が「脳の癖」と偶発的にマッチしたためです。

カメラアイ(視覚優位)

教科書のページを「画像」として脳に保存できるため、歴史や英単語などの暗記科目で圧倒的な強さを発揮します。

規則性への没頭(ASD特性)

「数式」や「文法」など、明確なルールがあるものをパズルのように解くのを好みます。感情や文脈を読み取る必要がないため、理数系科目が得意な傾向があります。

過集中(ADHD特性)

興味のある分野(昆虫、鉄道、歴史など)に対して、寝食を忘れて没頭します。これがたまたま受験科目と重なった時、驚異的な偏差値を叩き出します。

パターンB:「勉強できない」タイプの特徴

知能に問題がなくても、「情報の入り口」でつまずいてしまっている層です。

ワーキングメモリの不足(ADHD特性)

「先生の話を聞きながら、板書を写す」といったマルチタスクができません。脳の作業台(メモリ)がすぐに一杯になり、情報が溢れ落ちてしまいます。

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読み書きの困難(LD傾向)

文字が歪んで見えたり、行を飛ばして読んだりしてしまうため、教科書を読むだけで激しく疲労します。「勉強以前」の段階でエネルギー切れを起こしている状態です。

興味の偏りによる拒絶

「なぜこれをやる意味があるのか?」が納得できないと、脳がシャッターを下ろしてしまい、鉛筆一本動かせなくなります。

データ(調査結果)で見る事実

この「できる・できない」の差と、その後の進路については、行政データにも明確に表れています。

文科省調査:小中学生の「学習面」の困難は6.5%

2022年の文部科学省調査によると、通常学級に在籍する小中学生のうち、知的発達に遅れはないものの「学習面」に著しい困難を示す割合は6.5%(行動面も合わせると8.8%)です。 35人学級ならクラスに約2人。これは「本人の努力不足」ではなく、読み書きや計算における脳機能の特性が原因で、従来の授業形式についていけない層が確実に存在することを示しています。 (出典:文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」)

JASSO調査:大学等への在籍数は「7年で約3倍」に急増

一方で、「発達障害があっても勉強はできる(大学に進学できる)」こともデータが証明しています。 日本学生支援機構(JASSO)の調査によると、大学・短大・高専に在籍する発達障害(診断書有)の学生数は、平成25年から令和2年の7年間で約3倍(約4,000人→約12,000人)に急増しています。 これは、高い学力を持つ発達障害者が多数存在することの証明であると同時に、大学という高度な学習環境においても、支援を必要とする学生が増えている(学力だけで乗り切るには限界がある)現状を浮き彫りにしています。 (出典:日本学生支援機構「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」)

共通する課題:能力の「凸凹(ディスクレパンシー)」

「勉強ができる・できない」にかかわらず、共通しているのは「能力のバランスが極端である」という点です。

得意と不得意の差が激しい

発達障害(特にASD)の特徴として、知能検査(WAISなど)の下位項目間で数値の差が激しいことが挙げられます。

  • できる人: 「言語理解はIQ130だが、処理速度はIQ80」 → 難しい議論はできるのに、簡単な事務作業やノート取りができない。
  • できない人: 「知覚推理は高いが、ワーキングメモリが低い」 → 図形や発想は天才的だが、計算手順や単語が覚えられない。

「平均」を求められる環境では全員が「できない」とされる

日本の学校教育は「全教科まんべんなく平均点以上」を求めます。 そのため、凸凹がある発達障害者は、突出した才能(凸)があっても評価されず、苦手な部分(凹)ばかりを指摘され、自己肯定感を失いやすい構造にあります。

特性別:発達障害に適した「勉強法」と「働き方」

脳のタイプに合わせて、戦い方を変える必要があります。

「勉強できない」タイプ:ツールで凹を埋める

「書くこと」「読むこと」に固執せず、ITツールを「メガネ」として使います。

  • 音声読み上げ: 教科書を目で追わず、耳で聞いて理解する。
  • 音声入力・タイピング: 手書きの遅さをテクノロジーでカバーする。
  • 一点突破: 全教科の平均点は諦め、得意な1科目(プログラミングやデザインなど)だけを伸ばし、それを仕事にする。

「勉強できる」タイプ:専門性で凸を尖らせる

「勉強はできるが仕事ができない」とならないよう、汎用的なスキルではなく専門性を磨きます。

  • コミュニケーションの回避: 「空気を読む」が必要な総合職を避け、知識量が武器になる専門職(研究、エンジニア、法務)を目指す。
  • ルールの明確化: 曖昧な指示がない、マニュアルや論理が支配する世界を選ぶ。

仕事における活躍の場

最終的なゴールは、学校の成績ではなく「社会で評価される場所」を見つけることです。

学歴不問の実力主義:IT・クリエイティブ職

学校の勉強(暗記や協調性)が苦手だった層が、最も輝ける場所です。

  • Webデザイナー・動画編集: 学歴よりもポートフォリオ(作品)が全て。感性とツール操作力が問われる。
  • プログラマー: 文系科目が0点でも、論理的思考とコードへの没頭力があれば「天才」と呼ばれる可能性がある。

高度な知識職:専門家・アナリスト

勉強が得意だった層が、対人ストレスを減らして働ける場所です。

  • データアナリスト: 数字という共通言語で会話するため、感情的な摩擦が少ない。
  • 士業・技術職: 難関資格や専門知識が参入障壁となり、守られた環境で業務ができる。

まとめ:評価軸を「学校」から「社会」へ切り替える

「勉強ができない」ことは、あなたの知能が低いことを意味しません。 「勉強ができる」ことは、仕事ができることを保証しません。

重要なのは、学校という限られたルールの評価軸を捨て、社会において「自分の凸(得意)を活かし、凹(苦手)をツールや環境で補う」ことです。 就労移行支援などを活用し、自分の特性を客観的に分析した上で、適したスキルを身につけることが、キャリアを安定させる最短ルートです。

発達障害の「勉強できる・できない」に関するFAQ

Q. 大人になってからでも自分に合った勉強法は見つかりますか?

A. はい。自分が「見て覚えるタイプ(視覚優位)」か「聞いて覚えるタイプ(聴覚優位)」かを知るだけでも、学習効率は変わります。就労移行支援のプログラムや、WAIS検査の結果分析を通じて、自分の認知特性を知ることから始めましょう。

Q. 学歴に自信がない(勉強できない)ですが、ITエンジニアになれますか?

A. 十分に可能です。IT業界は学歴不問の求人が多く、実務スキルと成果物(ポートフォリオ)があれば採用されます。むしろ、学校の座学が苦手だった方が、手を動かす実践的なプログラミング学習には適応しやすいケースも多々あります。

Q. 高学歴(勉強できる)なのに仕事ができず辛いです。どうすればいいですか?

A. 「プライド」と「適性」のミスマッチが起きています。総合職や営業職など「対人スキル」が求められる場ではなく、あなたの強みである「知識・論理」が評価される専門職へのキャリアチェンジを検討してください。

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